2023年9月14日、弊社におきまして『「Platform Engineering」に関する報道機関向け説明会』を開催させていただきました。
「攻めのDX」の実現で注目される「Platform Engineering」とは - ZDNET Japan
私もこの説明会に向けた資料収集をさせていただきましたが、その1つとして開発者プラットフォーム Backstage の事例とその効果についても調査させていただいておりました。せっかく集めた情報ですのでここで皆さんにも共有させていただきたいと思います。
Backstageとは
Backstage はもともとSpotifyが開発し、2020年にCNCFに寄贈した Internal Developer PortalのOSSです。
開発チームが開発を進める際、本当に様々なツールにアクセスして情報を参照しています。コードリポジトリはもちろんですが、Issue Trackerなどのチケット管理サービス、CICDなどのツール、デプロイ先のリソース情報、ロギング/モニタリングサービスの画面、IaCサービスの画面など・・・ときにその数は10や20にも達します。
それぞれのサービスはとても優れており、深く情報を探索する際は役立つツール・サービスとなっています。しかし、開発中に見たいのは実はそのうちの概要レベルの情報のみ。その概要レベルを確認するためにそれぞれのサービスの画面を渡り歩くのは面倒なものです。
さらに最近の新しい開発モデルを採用している場合、1つのチームで複数のリポジトリ等を担当していることもあり、ますます確認が面倒になっていきます。
こうした点を解消するのが 開発者ポータル(Internal Developer Poratl: IDP)であるBackstageです。普段確認する概要レベルの情報はすべてBackstage上に集約することで、さまざまなサービス画面を見る必要がなくなります。もしより深く探索しなければならないときはクリック1つでそのサービスに遷移できるので、普段の作業がぐっと楽になります。 他にもBackstageにはサービスカタログやドキュメント収集・表示機能、検索機能、テンプレート機能など便利な機能がいくつも用意されています。まさに開発者の日々の作業のポータルとして機能するものです。
効果
すでに多くの企業が Backstage を利用しています。Backstageのリポジトリで利用していると申告のあった企業の一覧がありますが、世界にもその名前が通じる大企業からスタートアップまでさまざまな企業で利用されてることがわかります。
一部抜粋
- Netflix
- DAZN
- IKEA
- Siemens
- Fidelity Investment
- The LEGO Group
- Comcast
- Volvo cars
では、その効果はどれくらいあるものでしょうか。
これまでのこちらのブログでもチラチラとその数字が紹介されていますが、今回はそうした数字を含め、今回の説明会用にさまざまなところから収集した情報をお届けします。
Spotify社による調査
まずは Spotify社です。もともと Backstage を開発していた企業でもあり、社内の開発者ポータルとして活用している企業です。そのSpotifyがBackstageを活用しているエンジニアと活用しなかったエンジニアの生産性の比較を公開しています。その成果は
- GitHub上のアクティビティの数は 2.3倍に
- 開発サイクルを17%削減しつつコード変更量は2倍に
- デプロイ頻度は2倍に、しかしコードの安定度(品質)は3倍に
- 離職率も低レベルに(=エンジニアの満足度が向上)
と報告されています。
Toyota Motor North America
カイゼンマインド「TOYOTA Way」でPlatform Engineeringに取り組んでいるとのこと。
開発者ポータルとしてBackstageを活用しております。開発者ポータルやそこで提供されるツール・情報等を含め、Platform Engineeringの成果として
- 2年間で1000万ドルのコスト削減
- 数百あるチームにおいてそれぞれ8週間の開発時間が短縮
と大きな効果があったことが報告されています。
Adobe
開発者ポータルへのチャレンジは2015年から行っており、最近はBackstageを利用してるとのこと。 1つの例としてCI/CDの改善に対する取り組みが紹介されています。
- CICDフローが、35分〜45分から5分に短縮
Backstageを利用しているチームのCI/CDは3ヶ月で10万回あるそうです。1回につき30分の短縮があったのですから、3ヶ月での総削減時間は5万時間にもなります。
その他
具体的な効果までは述べられていないものの以下の組織でBackstageを導入し、その開発効率をあげているとのこと。また開発効率だけではなく、組織がスケールする際に開発に関するガバナンス/コンプライアンスが不十分となったためBackstageを利用してその問題を解消したとの報告もされています。
- AppFlyer
- Lunar(ノルウェーの金融機関)
興味を持たれた方に
世界の様々な分野の様々な企業で利用が進んでいるBackstage。CNCFに寄贈されたOSSということもあり、今や開発者ポータルのデファクトスタンダードになりつつあるのではないかと感じています。
様々な効果が認められる開発者ポータルBackstage。ちょっと試してみようと思われたかたもいらっしゃるのではないでしょうか。そうした方々に向けて、『「Platform Engineering」に関する報道機関向け説明会』と同時に『ちょこっとBackstage』というものを発表させていただきました。
様々なシーンに対応できるBackstageですが、実はその汎用性ゆえに最初の段階でいくつかやらなければならない作業があり、それが面倒なのです。そうした面倒さを排除すべく作成したのが『ちょこっとBackstage』です。
こちらをご利用いただければすぐにでもBackstageをお試しいただくことができます。
また、Backstageを実際にチームで使ってみたいけど、まだまだわからないことも多いし、どうやって進めていけばいいのかもわからない。そういった声もあるかと思います。我々のチームでは「開発者ポータル立ち上げサービス」としてお客様環境へのBackstage導入支援も行っています。
ご興味のある方はぜひ一度ご相談ください。