はじめに
こんにちは。ACS事業部の和田です。
今回は技術ネタとはちょっと違った話題、 「Gameful Design」について取り上げたいと思います
調べるに至った背景
ACS事業部では新規サービスを企画しており、そのサービスにこのノウハウを組み入れられないかなと調査しています。
一言で言うと、何?
ゲームの特性を活かして学習者が学ぶ動機を感じながら学習に取り組んでもらえること、です。
それってGamificationなんじゃないの?何が違うの?
例えばgamificationの場合、
「このタスクに取り組むとコインあげるよ、達成するとバッジがもらえるよ!だからこの学習しようね!」
と言う風に導きます。ゲームじゃないものにゲームっぽい要素を入れてユーザーを楽しく誘導します。ところが、
「そのコインやバッジって獲得して何の意味があるの?」
と思われてしまったら全く効力を発揮しません。 どんなバッジや称号を増やしても無駄になってしまいます。そのため、Gameful Designでは
「そもそもやること自体が楽しい!」
と思ってもらえるにはどうしたら良いだろう?ということに着目しています。
Gameful Design を設計する上での指針
様々な情報を整理すると、以下の3つの指針があるようです。
- 自分から「やりたい」と選択できること
- 成功体験を積み重ね、成功できると感じること
- 周りの人とつながっていると感じること(帰属意識)
自分から「やりたい」と選択できること
例えば、多種多様のコースから自分の好きなものを選択できる、 自分の能力の限界にチャレンジできる、 自分の性格に合ったやり方で進められる、 といった選択の自由があると、ユーザーの内的動機付けにプラスになるようです。
成功体験を積み重ね、成功できると感じること
基本的に、テストや減点という考え方はGameful Designにはありません。 チャレンジしたらしただけ加点される、むしろ失敗をしたら即座に適切なフィードバックを送ることによって報酬の一部として設計されています。
※ゲームでも穴に落ちるといったミスをしたら、効果音や楽しい音楽、演出を付けることで、逆にポジティブな感情が生まれるような設計がなされています。
ポイントとしては、「なぜ失敗したのか」「なぜこの点数なのか」の理由が明快なフィードバックであることです。例としてはユーザーに評価グレードを付ける場合、このポイント以上であればxxランクになると明示したりします。 逆にフィードバックがあってもその理由が不明瞭だと納得感が生まれず、没入を妨げてしまう要因になります。
周りの人とつながっていると感じること(帰属意識)
ゲームに参加しているのが自分だけではない、他のユーザーも一緒に参加していると感じさせることも大事なようです。 常にユーザーがつながり合っている必要はありませんが、以下のような体験を与えられると没入感が加速するようです。
- 自分もゲームの世界の一部であることを感じる
- 自分の行動がゲームの世界に何らかの影響を与えている
逆に自分がたった一人で参加していると感じさせてしまうと、ゲームから離脱してしまいます。
Gameful Designを取り入れる際の課題
一方、課題もあります。
- gamefulは結果を最優先にしないため、組織で導入されたケースというのはまだ見つからない
- 実験段階であり十分に体系化されておらず、これをすればgamefulになるという保証はまだない
現在アメリカでは、大学などの教育現場、医療現場等で様々な実験が行われているようです。
参考文献
最後に、日本語に和訳されているものは少ない状況ですが、 興味を持った方に書籍を紹介したいと思います。
The Gameful World: Approaches, Issues, Applications (The MIT Press) 著: Steffen P. Walz
Gamefulという単語は出てきていませんが、GamificationからGame自体に注目した本です。
ゲーム開発者の方が書いた本です。SuperBetterというアプリにゲームフルのメソッドを入れ込んだことで、 医療業界からも注目を浴びることになりました。
幸せな未来は「ゲーム」が創る 著:Jane McGonigal
現在、Gameful Design関連で唯一和訳訳されている本です。出版日は2012年となっていますが、ゲームフルの基本的な概要は詰まっているように感じました。
Game On!: Gamification, Gameful Design, and the Rise of the Gamer Educator 著:Kevin Bell
比較的新しめの本です。著者の大学教育での知見が中心に展開されているようです。