Microsoft の年次イベント Microsoft Build でのアップデートについてお届けしていきます。
本記事では「Building applications at hyper scale with the latest Azure innovations」というタイトルのセッションで紹介された Azure VM 関連のアップデート情報についてお届けします。 こちらのセッションでは、Azure VM を使ったアプリケーションの高速なスケールアウトを実現するための仕組みとして以下を取り上げていました。
- Azure Cobalt 100
- Virtual Machine Scale Sets (VMSS) の新機能
- Azure Compute Fleet
それでは、各仕組みについて見ていきましょう。
Azure Cobalt 100
昨年の Ignite で Microsoft は ARM ベースの独自プロセッサ Azure Cobalt 100 を発表していましたが、この Azure Cobalt 100 を使った新しい Azure VM がプレビューとして公開されました。
これらの VM は汎用目的の Dpsv6 シリーズと Dplsv6 シリーズ、メモリ最適化の Epsv6 シリーズとして提供されるようです。
Dpls, Dplds v6 | Dps, Dpds v6 | Eps, Epds v6 | |
---|---|---|---|
vCPU | 2-96 | 2-96 | 2-96 |
メモリ | 最大 192 GiB | 最大 384 GiB | 最大 672 GiB |
ローカルストレージ | 最大 5280 GiB | 最大 5280 GiB | 最大 5280 GiB |
ネットワーク | 最大 60Gbps | 最大 60Gbps | 最大 60Gbps |
リモート ストレージ スループット | 最大 40Gbps | 最大 40Gbps | 最大 40Gbps |
ワークロード | メディアエンコード ゲーミングサーバ 小規模データベース マイクロサービス |
アプリサーバ Web サーバ 中小規模データベース |
大規模データベース インメモリキャッシュ 分析 |
これらの Azure Cobalt 100を搭載した VM は従来の ARM ベース VM と比べて
- CPU 性能が 1.4 倍
- Java ベースのワークロードが 1.5 倍
- Web サーバ/.NET アプリケーション/インメモリキャッシュを使ったアプリケーションの性能が 2 倍
- NVMe を使ったローカルストレージの IOPS が 4 倍
と言ったように性能が大きく向上しているようです。 かつ、電力効率も上がっているとのことなので、利用者にも Microsoft 自身にも嬉しい VM となっています。
現時点では Azure Cobalt 100 を搭載した VM を使えるのは 7 つのリージョン(Central US, East US, East US 2, North Europe, Southeast Asia, West Europe, West US 2) のみとなっており、まだ東日本/西日本リージョンで試せませんが、GA するころには使えるようになっているのではないでしょうか。
プレビュー中に対象 VM を使ってみたい場合は Microsoft が公開している以下のリンクからリクエストを提出ください。
aks.ms/Cobalt100-VM-Preview-Signup
VMSS 新機能
仮想マシンスケールセット (VMSS: Virtual Machine Scale Sets) は、負荷分散が行われる VM のグループを作成して管理するためのサービスで、リクエストやスケジュールによって VM の数をオートスケールできるものです。
この VMSS の新機能がいくつか発表されました。
スタンバイ プール(プレビュー)
セッション中に大きく取り上げられていたのは、VMSS の スタンバイ プール という機能です。
通常、VMSS がスケールアウトする際は事前に定義されていた VM を新たに作成する必要があり、そこそこ時間が掛かっていました。 スタンバイ プールではスケールアウト時に必要な VM をあらかじめ作成しておき、必要になったタイミングでプールから VM を取り出して利用することで、スケールアウト時間を短縮することができます。
それなら VMSS で使われるインスタンスを必要な数だけ用意しておけばいいじゃないか、と思うかもしれません。 しかし、スタンバイ プールでは VM を「割り当て解除」の状態で用意することができ、インスタンスに対する課金が発生しません!(通常の VM 同様、割り当て解除状態でも発生するストレージなどの費用は掛かります)
そのため、コストを抑えながら必要なときすぐに VM を使えるようにしたい場合にはとても嬉しい機能じゃないでしょうか。 個人的には Azure Pipelines エージェント用の VMSS でスタンバイ プールを使えると泣いて喜びます。
Azure Pipelines の VMSS エージェントではパイプラインが動いてないときには VMSS のインスタンス数を 0 にスケールインすることができますが、この状態でパイプラインを実行するとエージェントが処理を始めるまでに時間が掛かってしまい、少し煩わしさを感じることがあります。 スタンバイ プールが GA された際にはぜひ Azure Pipelines の VMSS エージェントでも使えるようになっていて欲しいですね。
現時点では「均一 オーケストレーション モード (Uniform Orchestration) に対応していない」などの制約もあります。 また、実際に VMSS に対してスタンバイ プールの有効化を試してみたのですが、「The subscription is not registered for the resource type 'standbyVirtualMachinePools'.」というエラーのため失敗してしまいました。 ドキュメント通りにリソースプロバイダーやプレビュー機能の登録をしているのですが、他にも条件があるのかもしれません。
なんにせよ、個人的に GA が待ち遠しい機能の 1 つが発表されました。
その他の機能
セッションではスタンバイ プール以外の機能についても軽く紹介されていました。
自動インスタンス修復の再イメージ化、再起動の修復アクション
- 2023年11月にプレビュー公開されていた機能が GA しました。
- Azure Virtual Machine Scale Sets による自動インスタンス修復 - Azure Virtual Machine Scale Sets | Microsoft Learn
VMSS への VM アタッチ/デタッチ
- こちらも2023年11月にプレビュー公開されていた機能が GA しました。
- 仮想マシンを仮想マシン スケール セットにアタッチする、または仮想マシン スケール セットからデタッチする - Azure Virtual Machine Scale Sets | Microsoft Learn
可用性ゾーンの拡張(プレビュー)
- 上記と同じく2023年11月にプレビュー公開されていたようですが、こちらはまだプレビューのままなようです。
- Public Preview Announcement: Azure VMSS Zonal Expansion - Microsoft Community Hub
Canonical ワークロードのための厳格な SDP (安全な展開方法)
- すべての環境で同じタイミングでセキュリティアップデートを適用するのは難しい、という課題に対するアプローチのようです。
- Increased security and resiliency of Canonical workloads on Azure - now in preview - Microsoft Community Hub
Azure Compute Fleet
最後に、Azure VM をまとめて管理できる Azure Compute Fleet という機能が公開されました。
Azure Compute Fleet を使うことで、利用者は API に対して 1 回リクエストするだけで VM タイプ、価格モデル、SKU が混在した VM を 10,000 台デプロイできるとのことです。
また、スポット VM にも対応しており、フォールトトレランスで中断できるワークロードに有効で、コスト最適化とキャパシティの両立ができることも特徴して挙げられていました。
既に Azure ポータルからも Azure Compute Fleet を作れるようで、スポット VM に対して細かな設定ができることが画面から見て取れます。
数千台規模の VM を管理している組織にとっては嬉しい機能ではないでしょうか。
おわりに
Microsoft Build のセッションで発表された Azure VM 関連のアップデート情報を紹介しました。
AI 関連のアップデートが多い中、Azure VM のような従来のサービスも進化を続けているので、ぜひ各サービス・機能を使ってみてください。
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