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【Microsoft Build 2024速報】高速なスケールアウトを実現する Azure VM のアップデート情報

Microsoft の年次イベント Microsoft Build でのアップデートについてお届けしていきます。

build.microsoft.com

news.microsoft.com

本記事では「Building applications at hyper scale with the latest Azure innovations」というタイトルのセッションで紹介された Azure VM 関連のアップデート情報についてお届けします。 こちらのセッションでは、Azure VM を使ったアプリケーションの高速なスケールアウトを実現するための仕組みとして以下を取り上げていました。

  • Azure Cobalt 100
  • Virtual Machine Scale Sets (VMSS) の新機能
  • Azure Compute Fleet

build.microsoft.com

それでは、各仕組みについて見ていきましょう。

Azure Cobalt 100

昨年の Ignite で Microsoft は ARM ベースの独自プロセッサ Azure Cobalt 100 を発表していましたが、この Azure Cobalt 100 を使った新しい Azure VM がプレビューとして公開されました。

これらの VM は汎用目的の Dpsv6 シリーズと Dplsv6 シリーズ、メモリ最適化の Epsv6 シリーズとして提供されるようです。

Dpls, Dplds v6 Dps, Dpds v6 Eps, Epds v6
vCPU 2-96 2-96 2-96
メモリ 最大 192 GiB 最大 384 GiB 最大 672 GiB
ローカルストレージ 最大 5280 GiB 最大 5280 GiB 最大 5280 GiB
ネットワーク 最大 60Gbps 最大 60Gbps 最大 60Gbps
リモート ストレージ スループット 最大 40Gbps 最大 40Gbps 最大 40Gbps
ワークロード メディアエンコード
ゲーミングサーバ
小規模データベース
マイクロサービス
アプリサーバ
Web サーバ
中小規模データベース
大規模データベース
インメモリキャッシュ
分析

これらの Azure Cobalt 100を搭載した VM は従来の ARM ベース VM と比べて

  • CPU 性能が 1.4 倍
  • Java ベースのワークロードが 1.5 倍
  • Web サーバ/.NET アプリケーション/インメモリキャッシュを使ったアプリケーションの性能が 2 倍
  • NVMe を使ったローカルストレージの IOPS が 4 倍

と言ったように性能が大きく向上しているようです。 かつ、電力効率も上がっているとのことなので、利用者にも Microsoft 自身にも嬉しい VM となっています。

現時点では Azure Cobalt 100 を搭載した VM を使えるのは 7 つのリージョン(Central US, East US, East US 2, North Europe, Southeast Asia, West Europe, West US 2) のみとなっており、まだ東日本/西日本リージョンで試せませんが、GA するころには使えるようになっているのではないでしょうか。

プレビュー中に対象 VM を使ってみたい場合は Microsoft が公開している以下のリンクからリクエストを提出ください。

aks.ms/Cobalt100-VM-Preview-Signup

techcommunity.microsoft.com

VMSS 新機能

仮想マシンスケールセット (VMSS: Virtual Machine Scale Sets) は、負荷分散が行われる VM のグループを作成して管理するためのサービスで、リクエストやスケジュールによって VM の数をオートスケールできるものです。

この VMSS の新機能がいくつか発表されました。

スタンバイ プール(プレビュー)

セッション中に大きく取り上げられていたのは、VMSS の スタンバイ プール という機能です。

通常、VMSS がスケールアウトする際は事前に定義されていた VM を新たに作成する必要があり、そこそこ時間が掛かっていました。 スタンバイ プールではスケールアウト時に必要な VM をあらかじめ作成しておき、必要になったタイミングでプールから VM を取り出して利用することで、スケールアウト時間を短縮することができます。

それなら VMSS で使われるインスタンスを必要な数だけ用意しておけばいいじゃないか、と思うかもしれません。 しかし、スタンバイ プールでは VM を「割り当て解除」の状態で用意することができ、インスタンスに対する課金が発生しません!(通常の VM 同様、割り当て解除状態でも発生するストレージなどの費用は掛かります)

そのため、コストを抑えながら必要なときすぐに VM を使えるようにしたい場合にはとても嬉しい機能じゃないでしょうか。 個人的には Azure Pipelines エージェント用の VMSS でスタンバイ プールを使えると泣いて喜びます。

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Azure Pipelines の VMSS エージェントではパイプラインが動いてないときには VMSS のインスタンス数を 0 にスケールインすることができますが、この状態でパイプラインを実行するとエージェントが処理を始めるまでに時間が掛かってしまい、少し煩わしさを感じることがあります。 スタンバイ プールが GA された際にはぜひ Azure Pipelines の VMSS エージェントでも使えるようになっていて欲しいですね。

現時点では「均一 オーケストレーション モード (Uniform Orchestration) に対応していない」などの制約もあります。 また、実際に VMSS に対してスタンバイ プールの有効化を試してみたのですが、「The subscription is not registered for the resource type 'standbyVirtualMachinePools'.」というエラーのため失敗してしまいました。 ドキュメント通りにリソースプロバイダーやプレビュー機能の登録をしているのですが、他にも条件があるのかもしれません。

なんにせよ、個人的に GA が待ち遠しい機能の 1 つが発表されました。

learn.microsoft.com

その他の機能

セッションではスタンバイ プール以外の機能についても軽く紹介されていました。

Azure Compute Fleet

最後に、Azure VM をまとめて管理できる Azure Compute Fleet という機能が公開されました。

Azure Compute Fleet を使うことで、利用者は API に対して 1 回リクエストするだけで VM タイプ、価格モデル、SKU が混在した VM を 10,000 台デプロイできるとのことです。

また、スポット VM にも対応しており、フォールトトレランスで中断できるワークロードに有効で、コスト最適化とキャパシティの両立ができることも特徴して挙げられていました。

既に Azure ポータルからも Azure Compute Fleet を作れるようで、スポット VM に対して細かな設定ができることが画面から見て取れます。

Azure ポータルから Compute Fleet 作成

スポット VM にも対応

数千台規模の VM を管理している組織にとっては嬉しい機能ではないでしょうか。

techcommunity.microsoft.com

おわりに

Microsoft Build のセッションで発表された Azure VM 関連のアップデート情報を紹介しました。

AI 関連のアップデートが多い中、Azure VM のような従来のサービスも進化を続けているので、ぜひ各サービス・機能を使ってみてください。


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本記事の投稿者: 埜下 太一
Azure をメインにインフラ系のご支援を担当しています。
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