こんにちは、クラウド事業部の宋です。 名古屋の中日ホール&カンファレンスで開催された「クラウドネイティブ会議 2026」に参加してきました。
会場の雰囲気とあわせて、特に印象に残ったセッションを振り返ります。
現地参加した立場から、イベントの様子と学びをまとめました。
※本記事は、クラウドネイティブ会議 2026 のセッションを現地で視聴したエンジニアが、内容をできる限り客観的に共有しつつ、個人の学びや感想をまとめたものです。
クラウドネイティブ会議とは
クラウドネイティブ会議は、CloudNative Days、Platform Engineering Kaigi、SRE Kaigi の3イベントが合同で開催されるエンジニア向けカンファレンスです。
公式サイトでは「技を磨き、道を拓く。日本のど真ん中のクラウドネイティブ祭」と掲げられており、クラウドネイティブ、Platform Engineering、SRE の3領域を横断して現場の知見を学べる場として設計されています。
単に関連テーマの発表が並ぶのではなく、クラウドネイティブ技術が生む複雑さに対して、SRE は信頼性の観点から、Platform Engineering は開発者体験や認知負荷の観点から向き合うという関係性が整理されていたのが印象的でした。
今回は 2026 年 5 月 14 日から 15 日までの 2 日間、中日ホール&カンファレンスで開催されました。 現地参加に加えてオンライン参加も用意されたハイブリッド開催になります。
会場到着まで
会場の中日ホール&カンファレンスは中日ビル 6F にあり、地下鉄「栄」駅・「栄町」駅からアクセスできます。現地に到着すると、ビルの入口から名古屋感があるドラゴンズのキャラクターが。。
会場の様子
真ん中のエレベータから降りるとすぐ前に受付の場所があり、QRにてチェックイン→名札作成後右側のTrackルームに入れるようになります。
受付周辺ではスタッフの方々が案内を行っており、参加者が受付や準備を進めていました。
初参加でもスムーズに受付できました。
オープニング
オープニングでは、まずイベント全体の説明とあわせてスポンサー紹介が行われました。
スクリーンに各社のロゴが並ぶ中に、弊社エーピーコミュニケーションズのロゴも含まれていたのが個人的にうれしかったです。
セッションの振り返り 1: It takes a village - ソブリンなAIのためのソブリンなインフラをつくる
「It takes a village - ソブリンなAIのためのソブリンなインフラをつくる」のセッション。
タイトルだけを見ると少し抽象的にも感じますが、話を聞いていくと、AI 時代においては単に安くて便利なクラウドを選ぶだけではなく、どこにデータを置き、誰が運用を支配し、どの法体系の影響を受けるのかまで含めて考える必要がある、という非常に現実的なテーマでした。
内容としては、ソブリン AI を成立させるためには、その土台となるソブリンなインフラ、つまりデジタル主権を確保できるクラウド基盤が重要になる、という話が中心でした。特に印象に残ったのは、ソブリンクラウドは単なる新しい市場ではなく、今後の市場ルールそのものになっていく可能性がある、という視点です。従来のクラウド選定が経済合理性中心だったのに対し、今後は主権や法的要件、データの所在、運用主体といった軸がより重くなる、という整理にはかなり納得感がありましたね。
また、ヨーロッパでこの議論が先行しているという話も興味深かったです。ソブリンクラウドの要件がフレームワークとして整理され、公共調達に必要なレベルまで定義されていること、さらにドイツやフランスでは OpenStack on Kubernetes やハイブリッドクラウド戦略のような具体的な実装例が出ていることから、単なる理念ではなく制度や設計にまで落ちていることがわかりました。
AI とクラウドの時代にはインフラもまた社会的・制度的な前提込みで考える必要があるのだと感じました。オープンソースや相互運用性が重要になる理由も、単なる技術的な好みではなく、主権を守るための条件として語られていたのが印象的でした。
ホールの様子について
マップでは左側で「CHUNICHI HALL」の表示があり、来場者が次々と中に入っていってます。
セッションの合間にも多くの参加者が足を止めていました。展示を見るだけでなく、担当者と会話したり企画に参加したりと、学びと交流が自然に混ざり合っているのが印象的でした。
スポンサーブース周辺の様子。セッションの合間も人が絶えず、会場全体に活気がありました。
また、企画スペースや展示エリアも充実しており、単にセッションを聴いて終わるのではなく、会場を歩きながら新しい技術やコミュニティとの接点を作れるイベントになっていました。
展示や企画が行われていたスペース。交流しながら楽しめる空気感がありました。
セッションの振り返り 2: 巨大組織の認知負荷をどう下げるか?
ソフトバンク株式会社と株式会社エーピーコミュニケーションズによる共同登壇セッション。
このセッションで印象的だったのは、「認知負荷の低減」を単なる教育や努力の話ではなく、プラットフォームの設計課題として捉えていた点です。ソフトバンク社では、共通基盤である CNAP を通じて GitOps ベースのセルフサービス環境を提供し、インフラの標準化や自動化を進めてきた一方で、それだけでは開発者が迷わず使える状態にはならないという課題があったとのことでした。
そこで Backstage を開発者ポータルとして組み合わせ、情報の集約と申請業務のセルフサービス化を進めていたとのこと。 紹介されていた Azure アカウント払い出しの例では、これまで複数の担当者が関わっていた作業が、申請から作成、権限付与、通知まで自動化され、対応時間が大きく短縮。単に工数削減というだけでなく、開発者側と運用側の両方の認知負荷を下げている点が、この取り組みの本質だと感じました。
後半では、AI 時代における Backstage の役割にも話が広がり、TechDocs や Software Catalog、Software Templates を通じて、組織固有の知識やガードレールをどう共有するかという観点も紹介されていました。
Backstage を単なるツール導入ではなく、開発者体験の改善と組織知の流通を支える基盤として捉えられるということですね。
セッションの振り返り 3: Pets on Kubernetes ― RWOボリュームで「飼う」ステートフルアプリ設計の現実解
「Pets on Kubernetes ― RWOボリュームで『飼う』ステートフルアプリ設計の現実解」のセッション。
このセッションでは、Kubernetes で扱いやすい “Cattle” なワークロードではなく、どうしても状態を持ち、簡単には捨てられない “Pets” なアプリケーションをどう運用するか、という現実的なテーマが扱われていました。 特に、RWO ボリュームをアプリケーションの境界として捉え、バックアップ、復旧、マイグレーションの単位を揃えるという考え方がわかりやすかったです。
発表の中では、従来の Linux VM + Docker Compose ベースの運用では、OS メンテナンスや障害対応、証明書管理などの手作業が多く、結果として VM 自体が “Pets” 化してしまうという課題が共有されていました。 そのうえで、Kubernetes をフル機能の PaaS として使うのではなく、宣言的構成管理や自動再起動、API による運用自動化を活かしつつ、「シングルレプリカ前提」「RWO ディスク前提」という制約込みで現実的な運用モデルを組み立てていたとのこと。
特に興味深かったのは、Kubernetes を「プログラマブルな VM マネージャー」として使う、という割り切りです。ステートレス前提の理想形に無理に寄せるのではなく、現実に存在するステートフルな業務アプリケーションをどう安全に移していくかに焦点が当たっています。
すべてをきれいに作り直すのではなく、制約を明示したうえで SLO を設計するという考え方は、実務でも役立つ視点だと思いました。
セッションの振り返り 4: 雪国から始まるクラウドネイティブ実践
「雪国から始まるクラウドネイティブ実践 – OpenTelemetryで繋ぐ環境センサー、GPU、そしてコミュニティ」のセッション。
このセッションは、OpenTelemetry を使って GPU、環境センサー、冷却設備までを横断的に観測し、データセンター全体の最適化につなげていく取り組みが紹介されていました。 ソフトウェアやアプリケーションの可観測性に閉じず、物理設備まで含めてひとつの観測対象として扱っていたのがとても新鮮でした。
特に印象に残ったのは、GPU の温度や消費電力と、冷却設備の反応や出力を相関させて見ていた点です。単に個別メトリクスを監視するのではなく、異なるドメインのデータをつなぐことで、「水冷環境では本当に冷却装置が効いているのか」「どのタイミングで冷却能力が必要になるのか」といった問いに答えられるようになっていました。8 時間の連続負荷試験を通じて、普段は 0kW に見えていた冷却設備が一定条件でスパイク的に動くことを確認した、という話も具体的でよかったです。
私自身、推論基盤構築業務で EKS 上の環境に対して OpenTelemetry を使った KPI 測定を行っていることもあり、このセッションは特に興味深く聞けました。普段はサービスやプラットフォームの状態を把握するためにメトリクスを見ることが多いのですが、このセッションではさらに一歩進んで、GPU や冷却設備といった物理レイヤーまで含めて相関を取っていたため、OpenTelemetry を単なる計測手段ではなく、異なるレイヤーのデータをつないで運用上の意思決定に生かすための基盤として捉える視点が強く印象に残りました。
可観測性の価値を「障害解析」や「APM」だけに閉じず、電力や冷却、ひいては持続可能性の議論まで接続していた点が印象的でした。 クラウドネイティブ技術が、単にアプリケーションを動かすためのものではなく、物理設備を含むシステム全体の理解と改善にも使えることを実感できるセッションでした。
まとめ
クラウドネイティブ会議 2026 は、クラウドネイティブ、SRE、Platform Engineering という近接する領域をまとめて捉えられるだけでなく、会場全体の導線や展示、交流企画を通じて、現地参加ならではの熱量を感じられるイベントでした。
セッションの内容を学ぶことはもちろんですが、実際に会場を歩き、参加者やスポンサー、コミュニティの空気に触れることで、技術の広がり方や現場での関心の高さも実感できました。今回取り上げた 4 つのセッションは、主権を意識したインフラ設計、開発者体験、ステートフルワークロード、可観測性と対象はそれぞれ異なりますが、いずれも「現場の複雑さにどう向き合うか」という点で共通しており、非常に学びの多い参加になりました。特に OpenTelemetry に関しては、現在取り組んでいる推論基盤構築業務での KPI 測定の経験とも重なる部分があり、自分の業務と結びつけながら聞けたことが大きな収穫でした。