こんにちは、エーピーコミュニケーションズ 0-WANの山根です。 前回の記事では、SSE、SASE、CNAPP、XDRなどの新しい言葉が増え、ゼロトラストの全体像が分かりにくくなった背景を整理しました。 前回の記事はこちらです。
ゼロトラストを調べていると、非常に多くの製品やセキュリティ用語が登場します。 例えば、Identityの領域だけでも、IAM、IdP、SSO、MFA、IGA、PAM、ITDR、CIEM、NHIなどがあります。 ネットワークやアクセスの領域では、SWG、CASB、ZTNA、DLP、FWaaS、RBI、SD-WANなどが登場します。 Endpointやセキュリティ運用まで広げると、EPP、EDR、XDR、NDR、SIEM、SOAR、UEBAなど、さらに多くの言葉が出てきます。 一つひとつの用語を調べているうちに、いま何の領域を調べていたのか分からなくなったという経験がある方も多いのではないでしょうか。 私自身も、新しい製品や機能について調べる際に、製品ページや市場調査レポートだけを見ていると、全体の中での位置付けを見失うことがあります。 そこで今回は、製品やベンダーを見る前に、ゼロトラストを構成するセキュリティ機能を一度分解し、どの機能が、何を守るために存在するのかという観点から全体を整理していきます。
本記事は、複雑化するゼロトラストの全体像を、機能、市場、製品、アーキテクチャ、調達・運用の順に整理する「ゼロトラスト解体新書」シリーズの第2回です。 シリーズ全体の記事一覧は、本記事の巻末に掲載しています。

ゼロトラストに唯一の製品分類はない
最初に、今回のマップについて重要な前提を説明します。 ゼロトラストは、特定の製品カテゴリーを指す言葉ではありません。 米国国立標準技術研究所(NIST)が公開している「NIST SP 800-207 Zero Trust Architecture」では、ゼロトラストを、ネットワークの場所を理由に暗黙の信頼を与えず、ユーザー、端末、資産、リソースへのアクセスを個別に判断するためのアーキテクチャとして整理しています。
出典:NIST SP 800-207 Zero Trust Architecture
そのため、
この製品を導入すればゼロトラストになる
この機能だけがゼロトラストである
という明確な境界があるわけではありません。 また、セキュリティ機能の分類方法も一つではありません。 市場調査会社は、市場や競合製品を比較するためにカテゴリーを定義します。 製品ベンダーは、自社のプラットフォームや製品構成を説明するために機能を分類します。 公的機関は、組織がゼロトラストを実装・評価するための成熟度モデルやアーキテクチャを提示します。 それぞれ目的が異なるため、同じセキュリティ機能でも、資料によって配置される領域が異なることがあります。 例えば、CIEMはIdentity領域として整理されることもあれば、CNAPPを構成するCloud Security機能として整理されることもあります。 XDRも、Endpoint Securityの発展形として扱われる場合と、セキュリティ運用や分析基盤として扱われる場合があります。 NACはDevice Securityの機能として整理することも、Network Securityの機能として整理することもできます。 このため、今回作成する「0-WAN ゼロトラスト解体新書マップ」は、国際標準や特定の市場調査会社による公式分類ではありません。 NISTおよびCISAの考え方を基礎としながら、実際の製品選定、設計、導入、運用を考えやすくするために、0-WANが独自に整理したものです。
CISAが示すゼロトラストの5つの柱
米国Cybersecurity and Infrastructure Security Agency(CISA)は、「Zero Trust Maturity Model Version 2.0」において、ゼロトラストを次の5つの柱に分けています。
- Identity
- Devices
- Networks
- Applications and Workloads
- Data
また、これらすべてに関係する横断的な能力として、次の3つを定義しています。
- Visibility and Analytics
- Automation and Orchestration
- Governance
出典:CISA Zero Trust Maturity Model Version 2.0
この分類は、ゼロトラスト全体を理解するうえで非常に分かりやすいものです。 ゼロトラストはネットワークだけの話ではなく、
- 誰がアクセスしているのか
- どの端末を利用しているのか
- どの通信経路を通っているのか
- どのアプリケーションやワークロードへ接続するのか
- どのデータを利用しようとしているのか
を横断して判断する必要があります。 さらに、各領域から収集した情報を可視化・分析し、ポリシーへ反映し、自動的または継続的に改善していきます。

0-WANでは7つの機能領域に分けて整理する
CISAの分類をそのまま使用する方法もあります。 一方で、実際の製品市場や導入プロジェクトを考えると、可視化、リスク管理、セキュリティ運用などを独立した領域として見た方が整理しやすい場面があります。 そこで本連載では、ゼロトラストと、それを支える主要なセキュリティ機能を、次の7領域に整理します。
| No. | 領域 | 主に守る対象・役割 |
|---|---|---|
| 1 | Identity & Access | ユーザー、ID、権限、認証 |
| 2 | Device & Endpoint | PC、スマートフォン、サーバー、IoT・OT端末 |
| 3 | Network & Edge | インターネット、SaaS、拠点、プライベートアプリへの通信 |
| 4 | Application & Workload | Webアプリ、API、クラウド、コンテナ、ワークロード |
| 5 | Data & AI | 機密データ、ファイル、データベース、生成AI利用 |
| 6 | Visibility & Risk | ログ、脅威、脆弱性、攻撃経路、セキュリティリスク |
| 7 | Operations & Governance | インシデント対応、自動化、ポリシー、統制、継続改善 |
この7領域は、完全に独立しているわけではありません。 ゼロトラストでは、複数の領域から得られる情報を組み合わせてアクセスを判断します。 例えば、ユーザーが正しく認証されていたとしても、利用している端末がマルウェアに感染していれば、アクセスを許可すべきではありません。 端末が安全でも、通常とは異なる国や時間帯から、大量の機密データへアクセスしようとしていれば、追加認証やアクセス制限が必要になるかもしれません。 重要なのは、各領域を個別に強化するだけではなく、複数領域の情報をつなぎ、リスクに応じて継続的に判断することです。
0-WAN ゼロトラスト解体新書マップ
今回整理した全体像が、以下の「0-WAN ゼロトラスト解体新書マップ」です。

本マップは、NISTおよびCISAの考え方を基礎として、製品選定、設計、導入、運用の観点から0-WANが独自に整理したものです。
ここからは、それぞれの領域について、何を守り、どのような機能が含まれるのかを見ていきます。
1. Identity & Access
Identity & Accessは、ゼロトラストにおけるアクセス判断の起点です。 どれだけ通信経路や端末を保護しても、アクセスしているユーザーやIDを正しく確認できなければ、適切なアクセス制御はできません。 この領域では、主に次のことを確認・管理します。
- 誰がアクセスしているのか
- 本人であることをどのように確認するのか
- どのシステムを利用できるのか
- どのような権限を持っているのか
- その権限は現在も必要なのか
- 管理者や特権IDをどのように保護するのか
- サービスアカウントやAPIなど、人間以外のIDをどう管理するのか
主な機能
| 機能 | 役割 |
|---|---|
| IAM | ID、認証、アクセス権限を総合的に管理する |
| IdP/IDaaS | ユーザー認証を行い、各サービスへ認証情報を提供する |
| SSO | 一度の認証で複数のサービスを利用できるようにする |
| MFA | パスワード以外の要素を加えて本人確認を強化する |
| Passwordless | パスワードへの依存を減らし、FIDO2やパスキーなどを利用する |
| Lifecycle Management | 入社、異動、退職に合わせてアカウントを作成・変更・削除する |
| IGA | 権限申請、承認、棚卸し、職務分掌などを管理する |
| PAM | 管理者権限や特権ID、特権セッションを保護する |
| ITDR | ID基盤や認証情報に対する攻撃を検知・対応する |
| NHI Management | サービスアカウント、API、ワークロード、AIエージェントなどの非人間IDを管理する |
| Secrets Management | パスワード、APIキー、トークン、証明書などの機密情報を管理する |
| PKI/Machine Identity | 証明書を利用して端末やサービス、ワークロードを認証する |
ゼロトラストで重要になること
従来の認証では、正しいIDとパスワードを入力できれば、本人として扱われることが多くありました。 しかし、認証情報がフィッシングや情報窃取型マルウェアによって盗まれた場合、IDとパスワードだけでは正規ユーザーと攻撃者を区別できません。 そのため、現在は次のような情報を組み合わせます。
- MFAを完了しているか
- パスワードレス認証を利用しているか
- 通常と異なる場所や端末ではないか
- 短時間に不自然な移動が発生していないか
- 端末が企業管理下にあるか
- ユーザーやIDにリスクが検出されていないか
- 過剰な権限を持っていないか
Identityはアクセスの入口ですが、Identityの情報だけで判断するのではなく、Device、Network、Dataなどの情報と組み合わせる必要があります。
2. Device & Endpoint
Device & Endpointは、ユーザーが利用するPC、スマートフォン、タブレット、サーバー、IoT・OT機器などを保護する領域です。 ゼロトラストでは、ユーザーが正しく認証されていたとしても、利用している端末が安全でなければ、アクセスを許可しない、または利用できる範囲を制限することがあります。
主な機能
| 機能 | 役割 |
|---|---|
| UEM/MDM | PC、スマートフォン、タブレットの設定や利用状況を管理する |
| EPP | マルウェアや不正プログラムの実行を防止する |
| EDR | 端末上の挙動を監視し、脅威の検知、調査、封じ込めを行う |
| Device Posture | OS、パッチ、暗号化、EDR稼働状況などから端末状態を確認する |
| NAC | ネットワークへ接続する端末を識別し、接続可否や接続先を制御する |
| MTD | スマートフォンなどのモバイル端末に対する脅威を検知する |
| Asset Visibility | 組織内に存在する端末や資産を可視化する |
| CAASM | 複数の資産情報を集約し、管理漏れやセキュリティギャップを把握する |
| IoT/OT Security | IoT機器や制御システムを識別し、通信やリスクを監視する |
端末が安全であることをどう判断するのか
Device Postureでは、例えば次のような状態を確認します。
- 企業が管理している端末か
- OSがサポート対象か
- セキュリティパッチが適用されているか
- ディスク暗号化が有効か
- EDRが正常に動作しているか
- マルウェアや侵害の兆候がないか
- Root化やJailbreakが行われていないか
- 証明書が有効か
これらの条件を満たさない端末に対して、完全にアクセスを拒否する方法もあります。 一方で、すべてを拒否すると業務へ影響するため、
- 機密情報の閲覧のみ許可する
- ダウンロードやコピーを禁止する
- ブラウザー分離を適用する
- 仮想デスクトップ経由に限定する
- 修復用サイトだけを利用可能にする
といった段階的な制御も重要になります。
3. Network & Edge
Network & Edgeは、ユーザーや端末から、インターネット、SaaS、プライベートアプリケーション、クラウド、拠点などへの通信を保護する領域です。 今回の連載で今後詳しく取り上げるSSEやSASEも、この領域を中心としたソリューションです。 ただし、SSEやSASEは単一機能ではなく、複数のセキュリティ機能やネットワーク機能をまとめたものです。 ここでは、構成要素となる個別機能を整理します。
主な機能
| 機能 | 役割 |
|---|---|
| SWG | Webアクセスを検査し、危険なサイトや不適切な通信を制御する |
| CASB | SaaS利用を可視化し、データや操作を制御する |
| ZTNA | ユーザーとアプリケーションを最小権限で接続する |
| FWaaS | クラウドからファイアウォール機能を提供する |
| DNS Security | DNS通信を利用して不正ドメインや脅威への接続を防ぐ |
| RBI | Webコンテンツを隔離環境で実行し、端末への影響を防ぐ |
| Enterprise Browser | ブラウザー自体をポリシーの適用・制御ポイントにする |
| Microsegmentation | ワークロードや端末間の通信を細かく分離・制御する |
| SD-WAN | 拠点通信を制御し、経路選択や通信品質を最適化する |
| NDR | ネットワーク通信を分析し、不審な挙動や侵害を検知する |
ネットワークを信頼するのではなく、接続先を制御する
従来のVPNでは、ユーザーを社内ネットワークへ接続した後、そのネットワーク内で複数のシステムへ到達できる構成が一般的でした。 ZTNAでは、ユーザーをネットワーク全体へ接続するのではなく、許可されたアプリケーションやサービスへ個別に接続します。 これにより、ユーザーから見える攻撃対象領域を小さくし、侵害後の横展開を抑制しやすくなります。 一方で、ZTNAだけでは、インターネットやSaaSへのアクセス、機密データの持ち出し、拠点通信、Endpoint上の脅威まですべてを保護できません。 そのため、SWG、CASB、DLP、FWaaS、Endpoint Security、Identity Securityなどとの連携が必要になります。
4. Application & Workload
Application & Workloadは、Webアプリケーション、API、仮想マシン、コンテナ、Kubernetes、サーバーレス、クラウドワークロードなどを保護する領域です。 クラウド環境では、従来のデータセンターとは異なり、インフラ設定、権限、API、ソフトウェア依存関係、コンテナイメージなど、さまざまな要素がセキュリティへ影響します。
主な機能
| 機能 | 役割 |
|---|---|
| WAF | Webアプリケーションへの攻撃を検知・防御する |
| WAAP | WAF、API Security、Bot対策、DDoS対策などを統合する |
| API Security | APIを発見し、認証不備や不正利用、攻撃を検知する |
| CSPM | クラウド環境の設定不備やコンプライアンス違反を検出する |
| CWPP | 仮想マシン、コンテナ、サーバーレスなどのワークロードを保護する |
| CIEM | クラウド環境の権限を可視化し、過剰権限を削減する |
| KSPM | Kubernetesの設定や権限、構成上のリスクを確認する |
| SAST | ソースコードを静的に解析し、脆弱性を検出する |
| DAST | 稼働中のWebアプリケーションへアクセスし、脆弱性を検査する |
| SCA | OSSやライブラリの脆弱性、ライセンスリスクを確認する |
| ASPM | 開発・運用工程から得られるセキュリティ情報を統合し、リスクを管理する |
| Workload Identity | サービスやワークロード間の認証とアクセスを制御する |
開発時と実行時の両方を考える
アプリケーションセキュリティでは、稼働後の攻撃を防ぐだけでは不十分です。 開発段階で脆弱性や設定不備を発見し、修正する必要があります。 一方で、開発段階ですべてのリスクを除去することも難しいため、稼働中のワークロードやAPIを継続的に監視・保護する必要があります。 そのため、この領域では、
- 開発前・設計時
- コーディング時
- ビルド・デプロイ時
- 実行時
- インシデント発生時
までをつないで考えることが重要です。
5. Data & AI
Data & AIは、企業が保有するデータを発見、分類、制御、保護する領域です。 ゼロトラストでは、ユーザーや端末のアクセスだけではなく、そのユーザーが、どのデータへ、どのような操作をしようとしているのかまで確認する必要があります。
主な機能
| 機能 | 役割 |
|---|---|
| DLP | 機密情報の送信、アップロード、コピー、持ち出しを検知・制御する |
| DSPM | データの保存場所、機密性、アクセス権、リスクを可視化する |
| Data Classification | データの内容や重要度に応じて分類・ラベル付けする |
| Encryption | 保存中・通信中のデータを暗号化する |
| KMS | 暗号鍵を作成・管理する |
| HSM | 暗号鍵を専用ハードウェアで安全に保護する |
| Rights Management | ファイルを配布した後も閲覧、編集、転送などを制御する |
| Database Security | データベースへのアクセスや操作を監視・制御する |
| SaaS Data Security | SaaSに保存されたデータを発見・分類・保護する |
| AI Security | 生成AI利用、プロンプト、アップロード、AIアプリへのアクセスを制御する |
| Backup/Cyber Recovery | データを保全し、破壊・暗号化・障害から復旧できるようにする |
DLPだけではデータの全体像は分からない
DLPは、データが移動する場面を検査・制御するために重要です。 しかし、DLPを導入していても、
- どこに機密データが保存されているのか
- 誰がアクセスできるのか
- 公開範囲が適切か
- 不要なコピーが存在しないか
- 利用されていないデータが残っていないか
が分からないことがあります。 DSPMは、クラウドやSaaSなどに分散したデータの配置、機密性、権限、利用状況を可視化し、リスクを把握するための領域です。 DLPが主にデータの移動や操作を制御するのに対して、DSPMはデータがどこに存在し、どのような状態なのかを把握する役割を担います。 生成AIの業務利用が広がる中では、これらに加えて、
- どのAIサービスを利用しているのか
- どのデータを入力しているのか
- ファイルをアップロードしているか
- 生成結果をどのように利用しているか
- AIエージェントがどの権限で動作しているか
といった新しい管理も必要になります。
6. Visibility & Risk
Visibility & Riskは、各セキュリティ領域から情報を集め、現在の状況やリスクを把握するための領域です。 ゼロトラストでは、一度構築したポリシーを固定的に使い続けるのではなく、環境や脅威の変化に応じて継続的に見直す必要があります。 そのためには、まず組織内で何が起きているのかを可視化しなければなりません。
主な機能
| 機能 | 役割 |
|---|---|
| SIEM | 複数のシステムや製品からログを収集・分析する |
| UEBA | ユーザーや端末の通常行動を学習し、異常を検知する |
| XDR | Endpoint、Identity、Cloud、Networkなどの情報を関連付けて検知・調査する |
| Vulnerability Management | 資産の脆弱性を発見し、優先順位を付けて管理する |
| ASM/EASM | 外部から見える攻撃対象領域を発見・管理する |
| CAASM | 内部のIT・セキュリティ資産情報を集約・可視化する |
| Exposure Management | 脆弱性、設定不備、権限、攻撃経路などを統合してリスクを評価する |
| Attack Path Analysis | 攻撃者が重要資産へ到達する経路を分析する |
| BAS | 攻撃手法を模擬し、セキュリティ対策の有効性を検証する |
| Threat Intelligence | 攻撃者、脆弱性、マルウェア、侵害指標などの脅威情報を提供する |
「脆弱性がある」だけでは優先順位を決められない
企業環境には、多くの脆弱性や設定上の問題が存在します。 しかし、すべてを同時に修正することは現実的ではありません。 同じ深刻度の脆弱性でも、
- インターネットから到達できるか
- 攻撃コードが公開されているか
- 実際に悪用されているか
- 重要なデータへ到達できるか
- 強い権限を持つIDと関連しているか
- Endpointやネットワークで補完的な対策があるか
によって、実際のリスクは変わります。 Visibility & Riskの領域では、単に問題を一覧化するだけでなく、自社にとって、どのリスクを優先して改善すべきかを判断できる状態を目指します。
7. Operations & Governance
Operations & Governanceは、セキュリティを継続的に運用し、組織として統制するための領域です。 どれだけ優れたセキュリティ製品を導入しても、アラートを確認する人がいない、ポリシーが更新されない、インシデント時の役割が決まっていない状態では、十分な効果を得られません。
主な機能・活動
| 機能・活動 | 役割 |
|---|---|
| SOAR | アラート調査や封じ込めなどの対応を自動化・標準化する |
| Incident Response | インシデントの検知、調査、封じ込め、復旧を行う |
| Security Automation | 定型的な確認・対応・修復作業を自動化する |
| Policy Management | セキュリティポリシーを定義・管理・見直しする |
| GRC | ガバナンス、リスク、コンプライアンスを管理する |
| Compliance Management | 法令、規格、社内基準への適合状況を確認する |
| Third-Party Risk | 委託先、取引先、SaaSなど第三者に関するリスクを管理する |
| ITSM Integration | インシデント、変更、構成、問題管理と連携する |
| Continuous Improvement | 評価、検証、改善を継続的に繰り返す |
ゼロトラストは導入プロジェクトではなく継続的な取り組み
ゼロトラストは、製品を導入して完了する一度きりのプロジェクトではありません。 組織では、次のような変化が継続的に発生します。
- 新しいSaaSやクラウドサービスが導入される
- ユーザーが入社、異動、退職する
- 新しい拠点や子会社が追加される
- 利用端末やOSが変わる
- 新しい脆弱性や攻撃手法が登場する
- 法令や社内規程が変わる
- 生成AIなど、新しい業務ツールが利用される
- 製品の機能やライセンス体系が変わる
そのため、ゼロトラストでは、
- 現状を可視化する
- リスクを評価する
- ポリシーを設定する
- アクセスや操作を制御する
- 脅威を検知・対応する
- 結果を評価する
- ポリシーや構成を改善する
というサイクルを継続する必要があります。

すべての機能を個別製品で揃える必要はない
ここまで多くのセキュリティ機能を紹介してきました。 このマップを見ると、すべての機能に対して、個別の製品を導入しなければならないのかと不安になるかもしれません。 しかし、必ずしもすべての機能を別々の製品で導入する必要はありません。 現在のセキュリティ製品は、複数の機能を統合したプラットフォームへ進化しています。 例えば、あるプラットフォームでは、SWG、CASB、ZTNA、DLP、FWaaSなどを統合して提供しています。 別のプラットフォームでは、EPP、EDR、Identity Security、Cloud Security、SIEM、Threat Intelligenceなどを統合しています。 Identityの領域でも、SSO、MFA、Lifecycle Management、Identity Governance、リスクベース認証などが一つの基盤へ統合されつつあります。 統合には、次のようなメリットがあります。
- 管理コンソールを減らせる
- エージェントを集約できる
- ポリシーやログを連携しやすい
- セキュリティ情報を横断的に利用できる
- 契約やライセンスを整理しやすい
- 新しい機能を既存基盤へ追加しやすい
一方で、一つのプラットフォームがすべての機能を同じ深さで提供できるとは限りません。 専門性の高い製品を採用した方がよい領域もあります。 そのため、製品選定では、
すべての機能を個別製品で揃えるか
すべてを一社のプラットフォームへ統一するか
という二択ではなく、
どの領域を中核プラットフォームへ集約し、どの領域を専門製品で補完するか
を考えることが重要です。
機能とソリューションの違い
今回の記事では、ゼロトラストを構成する個別のセキュリティ機能を中心に整理しました。 しかし、実際の製品市場では、これらの機能が複数のソリューションとしてまとめられています。
例えば、
- SWG、CASB、ZTNAなどをまとめたSSE
- SSEとSD-WANなどを統合したSASE
- CSPM、CWPP、CIEMなどをまとめたCNAPP
- Endpoint、Identity、Cloudなどの情報を関連付けるXDR
- 脆弱性や攻撃経路を継続的に評価するCTEM
- DLP、DSPM、データ分類などをまとめたData Security Platform
などがあります。 ここで難しいのは、これらが完全に独立したカテゴリーではないことです。 製品やベンダーによって、含まれる機能の範囲は異なります。 また、複数のソリューションで同じ機能を扱うこともあります。

次回は、今回整理した個別機能が、SSE、SASE、CNAPP、XDR、CTEMなどのソリューションとして、どのようにまとめられているのかを詳しく整理します。
まとめ
今回は、ゼロトラストを構成するセキュリティ機能を、次の7領域に分けて整理しました。
- Identity & Access
- Device & Endpoint
- Network & Edge
- Application & Workload
- Data & AI
- Visibility & Risk
- Operations & Governance
ゼロトラストで重要なのは、それぞれの領域を個別に強化することだけではありません。 ユーザー、端末、通信、アプリケーション、データ、脅威、リスクの情報をつなぎ、状況に応じてアクセスや操作を判断する必要があります。 また、ゼロトラストは、製品を導入すれば完了するものでもありません。 環境や脅威の変化を可視化し、リスクを評価し、ポリシーを見直し続ける継続的な取り組みです。 一方で、今回紹介したすべての機能について、個別製品を導入する必要があるわけではありません。 複数の機能をまとめたプラットフォームを中核として利用し、企業固有の要件や専門性が必要な領域を別製品で補完する方法もあります。 重要なのは、最初から製品名を選ぶことではなく、
自社は何を守る必要があり、そのためにどのセキュリティ機能が必要なのか
を整理することです。 次回は、
SSE、SASE、CNAPP、XDR、CTEMは何が違うのか
という疑問に対して、個別機能と統合ソリューションの関係を整理していきます。
前後の記事
ゼロトラスト解体新書 全リンク集
「ゼロトラスト解体新書」では、複雑化するゼロトラストの全体像を、 機能、市場、製品、アーキテクチャ、調達・運用の順に整理しています。
第1部 ゼロトラストを解体する
techblog.ap-com.co.jp techblog.ap-com.co.jp techblog.ap-com.co.jp
第2部 市場と製品を比較する
techblog.ap-com.co.jp techblog.ap-com.co.jp techblog.ap-com.co.jp techblog.ap-com.co.jp
第3部 ゼロトラストを再構築する
techblog.ap-com.co.jp techblog.ap-com.co.jp techblog.ap-com.co.jp
参考資料
- NIST SP 800-207 Zero Trust Architecture
- CISA Zero Trust Maturity Model Version 2.0
- NIST NCCoE Implementing a Zero Trust Architecture
0-WANについて
0-WANでは、Zscaler、CrowdStrike、Oktaをはじめとするゼロトラスト関連製品について、構想整理、製品選定、PoC、設計、導入、展開、運用設計、継続的な改善まで、お客様の環境や課題に合わせた支援を行っています。 ゼロトラストの検討では、製品を選ぶ前に、現在のユーザー、端末、アプリケーション、データ、通信、運用体制、既存製品を整理することが重要です。 そのうえで、どの領域を統合プラットフォームへ集約し、どの領域を専門製品で補完するのかを設計していきます。 ゼロトラスト全体の構想や製品選定にお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
注意事項・免責事項
本記事は、ゼロトラストおよび関連するセキュリティ技術の全体像を理解することを目的として、2026年8月2日時点の公開情報を基に整理したものです。 本記事に掲載している「0-WAN ゼロトラスト解体新書マップ」は、NISTおよびCISAの考え方を基礎として、製品選定、設計、導入、運用の観点から0-WANが独自に整理したものです。公的機関、市場調査会社、製品ベンダーによる公式な製品分類ではありません。 セキュリティ機能には複数の解釈や分類方法があり、同じ機能が複数の領域や製品カテゴリーに含まれる場合があります。 また、用語、製品カテゴリー、市場区分、機能名称、提供範囲は、今後の技術動向、製品アップデート、買収、製品統合、市場定義の変更などによって変わる可能性があります。 実際の製品選定、設計、導入にあたっては、各ベンダーの最新公式情報、正式なライセンス条件および販売パートナーから提供される情報をご確認ください。