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ShowNet「水冷」を新卒が視る!

はじめに

こんにちは、2026年度新卒で入社いたしました組織能力開発部の柴田です。
本記事は、インターネットテクノロジーのイベントである「Interop Tokyo 2026」への参加レポートです。
展示内容の中で特に興味深かった「水冷技術」について、
私個人の視点から感じたことや学んだことを共有させていただきます。
※本記事の内容は、イベントでの展示や説明に基づいた私個人の考察・感想であり、
所属する組織の公式な見解や推奨を代表するものではありません。(執筆時点2026年6月)

技術面・執筆面ともに未熟な点も多くございますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。

選定した理由

数ある最先端技術の中で、私が「実際の仕組みを知りたい!」と興味を惹かれたのが、この「水冷インフラ」でした。

実は私は昔からゲームが大好きなのですが、以前SNSのショート動画で「すべてのパーツが液体の中で稼働している、超ハイスペックなゲーミングPC」を見たことがありました。当時は「かっこいい!すごい技術だな」と圧倒されるだけだったのですが、今回のInteropで「水冷」という文字を目にした瞬間、当時のワクワクした記憶が一気に蘇ってきました。

個人向けのゲーミングPCで使われている技術と、データセンターを支えるエンタープライズ向けの「水冷インフラ」は、同じ仕組みなのか、それとも全く違う進化を遂げているのか――。インフラエンジニアの新卒社員として、この機会に仕組みを徹底的に調べてみたい!という強い探究心から、今回のテーマに選定しました。

水冷(液冷)とは?

みなさん「水冷」と聞いてどんなことをイメージしますか?
私は、「水の中に浸してパーツを冷やすってこと?壊れない?」 「コスト高そう」そんなイメージを持っていました。
一般的に、液体を使って機材を冷やす技術全般を「液冷(えきれい)」と呼び、その中で特に水を冷媒として使うものを「水冷(すいれい)」と呼びます。
液冷という大きな枠組みの中に、水冷が含まれているイメージです。

※ちなみに、ここで言う「水」とは単なる水道水や純水だけではありません。凍結やサビ、藻の発生を防ぐためにプロピレングリコール(PG)などが数~数十%混ざった「水ベースの専用冷却液(クーラント)」も含まれます。

本記事では私が特に注目した、水を冷媒とする技術にスポットを当てたいと思います。
そのため、ここから先は親しみを込めて「水冷」という言葉に統一してお話しさせていただきます!

もう少し詳しく説明します。

サーバーが冷える仕組みは、実は4つのステップによる「熱のバケツリレー」になっています。

※サーバー内で熱源となるのはCPUだけではなく、GPUやその他のアクセラレータ、メモリーなども含まれています。
本記事ではこれら全ての計算ユニットを包括し、以降は便宜上「CPU」という言葉で統一して取り上げさせていただきます。

【熱のバケツリレー】

1. CPUが発熱する

サーバーの頭脳であるCPUが高負荷で熱を出します。

2. 機器を冷やし、熱を水にパスする(ウォーターブロック)

CPUに密着した金属製の「ウォーターブロック」の中を冷却液(2次側の水)が流れており、CPUの熱をグングン吸い取ります。

3. 温まった水をCDUへ送る(2次側ループ)

熱を吸って温水になった冷却液は、ポンプの力でラックの最下部にあるCDU(冷却水循環装置)へ送られます。
ここでの冷却液が循環する経路は、専門用語で「2次側(セカンダリーループ)」と呼ばれます。これは、CPU等から熱を回収してCDUまで運ぶクローズドな経路のことです。 ※CDUは水を通す量や温度の調整(コントロール)を担いますが、自分自身で水を冷やす機能は持っていません。

4. CDUからチラーへ熱をパスして、外へ捨てる(1次側ループ)

そこで、チラー(冷却装置)の出番です。CDUの内部で、ラック内の水(2次側)と、チラーから来た冷水(1次側)が「お互い混ざり合うことなく、熱だけをパス」します。熱を受け取った1次側の水を「キンキンに冷やす or 熱を外に逃がす 」ことで冷水としてまた循環させます。

※1次側: CDUを介して受け取った熱を、建物の外やチラーなどの「排熱先」まで運ぶ経路。

【一言でまとめるなら】

CDU: ラック内の水を循環させ、適切な温度・量に「コントロールして配る」装置

チラー: CDUから回ってきた熱を、物理的に「屋外へ排熱して水を冷やす」装置

私自身、チラーとCDUの違いを勉強するにあたり、摂津金属工業株式会社さんの解説ページがとても参考になりました。後ほどまた紹介するのですが、インフラの全体像が分かりやすくまとまっているので、仕組みを詳しく知りたい方におすすめです!

サーバーラックの冷却に“水冷”という選択肢を!空冷との違いと導入のポイント|摂津金属工業株式会社|SETTSU・IDEAL

なぜ今、業界全体が「水冷」に舵を切っているのか?

結論から言うと、水冷という技術が今まさに求められているのは、「従来の空冷(ファン)による冷却が限界を迎えたから」です。

近年、AIの急速な普及や映像処理の高度化によって、サーバーのGPUやCPUの性能は爆発的に向上しています。さらに、ネットワークの世界でも「400G / 800G / 1.6Tbps」といった超広帯域化・高密度化が進み、通信を処理するネットワーク機器側の発熱量も急増しています。

これまでは、空気を送り込む「空冷」が主流でした。しかし、最新機器の発熱量はもはや空冷で冷やせる限界を超えつつあります。

そこで必要になったのが「水冷」です。液体は、空気よりも圧倒的に多くの熱を効率よく運ぶ特性を持っています。限界を迎えた空気の代わりに、この「水の力」を使うことで、超高発熱な最先端機器をピンポイントかつ高効率に冷やすことが可能になるのです。

ShowNet 2026に見る「水冷インフラ」の具体像

ShowNetのラック展示には、各担当エンジニアが手書きした解説ボードが添えられていました。 コア技術や機器の仕組み、知られざる見どころが分かりやすく解説されていて面白かったです!

D-5ラック上部

水冷サーバー:Lenovo ThinkSystem N1380 Enclosure

機器の説明:とっても静かです。 水冷サーバーに使われている冷却液は、純水を利用しています。純水を利用している理由は、PG25*1よりもはるかに安全で効率的な代替品だからと公式に説明されています。

Lenovo ThinkSystem SC777 V4 Neptune Datasheet > Lenovo Press

D-4 水冷ラック表側

ラックの裏側です。水冷システムの管に、本来であれば気泡は入れないのですが、今回は気泡を入れることで、あえて水流を視覚的に見せているようです。

D-4 水冷ラック 裏側

Lenovoさんの水冷サーバーについて開発者目線で詳しく書かれています。 https://lenovo-neptune-lp.com/pdf/developer_interview.pdf

水冷スイッチ:HPE Juniper Networking QFX5250

機器の説明: 1.6Tbps×64ポート 世界初の動態展示! キンキンに冷えてて、やはり静か。

D-6ラック上部

HPEさんのブースでは、ShowNetで使われている水冷スイッチの中身を見ることができました!

D-6 水冷スイッチの中身

「実際に動いていた(動態展示)」ということの凄さ

カタログや展示品を眺めるだけでなく、今回のShowNetで私が最も衝撃を受けたのは、この水冷インフラが「実稼働(動態展示)」していたという点です。これがどれほど恐ろしく、そして凄いことなのか、インフラエンジニアの視点で3つのポイントに感動しました。

失敗は許されない水漏れのリスク

精密機械にとって、水は最大の天敵です。もし配管や接続の作業ミスがあった場合、そのラックにあるほかの機器がすべて壊れてしまいます。 各機器の価格を調べたところ、D-4のラックだけで数千万円規模、あるいはそれ以上。自分だったら緊張のあまり手がプルプル震えそうです。

マルチベンダーで作るという難しさ

水冷システム自体もさることながら、InteropのShowNetは、各出展社から提供される2000以上の最新のネットワーク機器やサービスを相互に接続し、最先端の技術で構成されています。規格もメーカーも違うものを一つにするために、トップエンジニア(NOCチーム、STM(ShowNet Team Member))とコントリビューターの総勢849名が、その技術力とリソースを集結して構築されています。

わずかな期間で完成させた

さらに驚くべきことは、このシステムをわずか2週間足らずで完成させたということです。

「HotStage」【5月29日から6月5日】事前構築期間で何もない展示ホールに機材を搬入し、設置や構築、検証を行う期間。

「Deploy」【6月8日から6月11日】組み上げたネットワークを会場各所へ配置し、出展社様・来場者がインターネットを使える状態に仕上げる期間。

普通のデータセンターの構築では、1か月~1年以上かかる規模を、このスピード感で作り上げるプロの技術力に驚きを隠せません。

※NOCのリアルな裏側のブログ。気になった方は是非! 【Day1】“ゼロ”から始まるShowNet 2026、ついに構築スタート!|ShowNet NOC Team

まとめと今後の抱負

ゲーミングPCで使われている技術(浸漬冷却)と今回の水冷システムの技術(コールドプレート冷却)は、「水を使って熱を移動させる」という根本的な物理の仕組みは同じですが、「冷やし方のスタイル」と「規模(熱をどこに捨てるか)」が違いました。

改めて「水冷」は、AI時代に伴って爆発的に増大する発熱量に対応するために生まれた新技術です。だからこそ、専用の設備はもちろん、これまでにはない全く新しいインフラの知識や知見が必要不可欠になります。

ShowNetの現場では、日本屈指のプロエンジニアの方々が、わずかな期間の中で最先端機器の実装を成し遂げていました。それだけでなく、インフラエンジニアの美学とも言える「ケーブルコスメ(配線の美しさ)」にまで徹底的にこだわり、芸術的なラックを作り上げている姿にプロとしての強い誇りを感じました。

また、今回のイベントでは水冷だけでなく、最新の「AI」や「セキュリティ」についても多くのことを学ぶことができました。今後は、現地でインプットした最先端の知識をしっかりと自分のものにし、「日々の業務にどう結びつければ、会社としての成長や新しい価値に繋げられるか」を追求していきたいと思います!

余談(個人的に気になった疑問について)

ここからは、「水冷」について調べているうちに率直に思った疑問点とその答えを残しておきます。

①冷却液って水道水ではだめなの?

冷却液に種類があるのを知った時に「そもそも水道水ではなぜダメなんだろう」と思いました。

理由:ミネラル成分が配管を詰まらせるから

水は熱を伝える能力自体は高いのですが、水道水にはカルシウムやマグネシウムなどの「ミネラル成分」が含まれています。これらがサーバーの熱で高温になると結晶化して「スケール(水垢)」となり、細い冷却配管の内部にこびりついて水流を妨げてしまうためです。

ソース(根拠となるデータ)  

米IBM社の水冷システムのドキュメントに次のような記載がありました。
・カルシウム濃度1.0ppm以下
・マグネシウム濃度1.0ppm以下
※ppm=mg/L Water cooling system specification and requirements

日本(関東)の水道水を調べたところ
・カルシウムが最高値5.94 (mg/100g)  中央値1.93 (mg/100g)
・マグネシウムが最高値1.40  (mg/100g) 中央値0.46 (mg/100g)

日本食品標準成分表 一般成分 水道水
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/12/24/1365334_1-0326.pdf

単位をIBMの基準(mg/L)に合わせるため、数値を10倍に換算して比較してみます。(※水1L=約1,000gとして計算)
そうすると
・カルシウムの場合(IBM基準:1.0 ppm以下)
最高値 5.94 (mg/100g) → 59.4 (mg/L) ※IBM基準の約60倍
中央値 1.93 (mg/100g) → 19.3 (mg/L) ※IBM基準の約20倍

・マグネシウムの場合(IBM基準:1.0 ppm以下)
最高値 1.40(mg/100g) → 14.0 (mg/L) ※IBM基準の約14倍
中央値 0.46(mg/100g) → 4.60 (mg/L) ※IBM基準の約4.6倍

結論「精密な水冷機器にとっては、ミネラルが多すぎてそのままでは使えない」

②「純水」と「PG25」どう区別されているの?

「純水」と「PG25」が一般的に使われているのですが、どう区別されているのか。 それぞれの違いをまとめてみました。

純水とPG25の使用用途の違い

金属配管へのリスク

冷却配管の内側にゴミや結晶が溜まり、流れを悪くしてしまうリスクです。  

純水: 周囲の金属からイオンを奪って溶かそうとする性質(腐食性)が非常に高く、安価なアルミニウムや炭素鋼の配管は一瞬でボロボロになります。
PG25: 「防錆剤*2」が添加されているため、金属を痛めにくいです。

液体冷却における冷却液選定ガイド (Corrosivity of deionized waterの項目) Best heat transfer fluids | Eaton

凍結のリスク(0℃以下での運用)

冬場の輸送時や、データセンターの外部チラー(冷却機)が氷点下に晒された際のリスクです。

純水: 0℃以下になると凍って体積が膨張し、配管やサーバーのウォーターブロックを内側から破裂させます。 PG25: プロピレングリコールが混ざっているため融点が下がり、約 -10℃まで凍結しないため、 冬場のシステムのシャットダウン時や寒冷地での運用でも配管破裂を防げます。

「プロピレングリコール水溶液の凍結点」のグラフ・表(ページ上部)
Propylene Glycol based Heat-Transfer Fluids

冷却効率(熱の逃がしやすさ)

サーバーなどの熱をいかに効率よく奪い、運べるかという指標です。

純水: 水の比熱(熱を蓄える能力)は 4.184kJ/(kg・K)と、あらゆる液体の中でもトップクラスです。熱を非常に効率よく逃がせます。 PG25: プロピレングリコールを25%混ぜると、比熱が純水より約10〜15%低下します。また、液体に粘り気(粘度)が出るため、同じ量を流すのに強力なポンプが必要になり、消費電力が増加します。

純水とプロピレングリコール(PG)混合液の比熱(熱の奪いやすさ)や粘度の違いに関する物性データ
Propylene Glycol based Heat-Transfer Fluids

結論: 「性能限界を攻めるなら純水、安全性と扱いやすさを取るならPG25」

参考文献

データセンター冷却技術の最前線を解説 – エンタープライズIT [COLUMNS]

冷却技術の種類は?水冷・空冷・油冷・ペルチェ冷却の基本原理と特徴を比較 | 冷熱プロフェッショナルの株式会社DEGREE(ディグリー)|三重県鈴鹿市

水冷@ShowNet 2026:Geekなぺーじ

ENGINEERS' COLUMN|CTCテクノロジー株式会社

メンターからのひとこと

本記事の作成の支援を担当した、エンジニアリングメンター室の横地です。エンジニアリングメンター室では、このようアウトプットを支援する活動を行っています。私の立場からひとこと添えさせていただきます。

私の観測範囲では、今回の Interop で水冷という言葉をよく見かけました。ただ目立つテーマだからという理由ではなく、自身が元々知っていたゲーミングPCでの水冷と今回の水冷とでどう違うのか、といった疑問を持ってテーマを選定されていた姿勢がとても良いと思いました。疑問や仮説をもって情報をインプットすると捗りますよね。

私もこのテーマは注目していたのですが、HPE社ブースにあったスイッチの内部の写真をうっかり撮り忘れてしまいました。ちゃんと撮った柴田さんはさすがです。当日は「写真いっぱい撮りました!!」と楽しそうに報告してくれたのも印象的です。ブログにも多くの写真が掲載されていて、イベント感があって刺激的な記事になったと思います。全体的に、イベントに参加した人ならではのインプットとアウトプットになりました。

これからの実業務においても、疑問や仮説を持つことや、今その場の価値を捉えることも大切にしながら活躍されることを期待しています。

お疲れさまでした!

*1:精製水で25%の重量で希釈したプロピレングリコール(無害)と腐食防止剤、安定剤、pH緩衝材、消泡剤を配合した冷媒
https://www.ctct.co.jp/special/column/vol-003.html

*2:金属材料の表面に発生する錆を防ぐために用いられる薬剤のこと