
はじめに
こちらは エーピーコミュニケーションズ Advent Calendar 2025 3日目の記事です!
こんにちは、クラウド事業部の梅本です。
今回は Cline (VSCode) × MCP × AWS Cost Explorer を組み合わせて、AWS のコスト解析作業を AI に 「丸投げ」 してみようと思います。
具体的には、最近話題の自律型 AI エージェント Cline に、マネジメントコンソールを開くことなく AWS Cost Explorer のデータを分析してもらいます。
本記事で登場する技術の位置づけは以下の通りです。
Cline (VSCode拡張機能): 本記事の「主役」です。コードを書くだけでなく、コマンド実行やファイル操作も自律的に行う AI エージェント。今回は彼に分析の指示を出します。
MCP (Model Context Protocol): 本記事の「カギ」となる技術です。AI モデルと外部サービス(今回は AWS)を標準的な方法で接続するためのプロトコル。これを使うことで、Cline が AWS のデータを安全かつスムーズに扱えるようになります。
AWS Cost Explorer: 今回の「分析対象」です。通常はコンソールや CLI から叩くものですが、今回は MCP サーバー経由で Cline に直接参照させます。
つまり、「MCP という共通言語を使って、Cline(AI)に AWS Cost Explorer(データ)を直接見に行ってもらう」 というアプローチです。
それでは、早速環境を作っていきましょう!
Cline の設定
まずはベースとなる環境の準備です。 VSCode および Cline 拡張機能のインストール手順については、本記事では割愛します。未導入の方は以下よりインストールしてください。
Cline から AWS を操作する際の認証には、以前の記事で紹介した AWS Profile + MFA セッショントークン を利用する方法を採用しています。これにより、MFA (多要素認証) を必須としている環境でも、安全に Cline に権限を渡すことができます。
設定画面は以下の通りです。

今回の実行環境とモデルは以下の通りです。
- ソフトウェアバージョン
- VSCode : 1.106.3
- Cline : 3.39.0
- AI Model Settings
- Provider : Amazon Bedrock
- Model : Claude 4.5 Haiku
MCP Server 登録
さて、MCP (Model Context Protocol) で AI に外部ツールを使わせるためには、AI とツールの間を取り持つ 「MCP Server」 という仲介役プログラムを動かす必要があります。 今回は AWS Cost Explorer を扱いたいので、AWS と対話できる MCP Server を手元の PC で起動しておく必要があります。
本来であれば、AWS Labs が公開している公式リポジトリの手順に従い、設定ファイル ( cline_mcp_settings.json ) を自分で書き換えてセットアップしていきます。
しかし、今回は「サクッと」進めるために、Cline の Marketplace 機能 を頼ることにしました。 Cline の画面にある「MCP Servers」タブから Cost Explorer そのものズバリなサーバーが見つかります。
インストールボタンを押し、Cline にセットアップを任せてみました。最初はREADMEを読んで順調だったのですが...

どうやら様子がおかしいです。 処理が進んでいるようでいて、肝心の環境構築が完了せず、エラーや確認待ちで止まってしまいました。

ログをよく見てみると、この MCP Server を動かすために必要な Python のパッケージ管理ツール uv が、私の端末に入っていなかったようです。 Cline はインストールしようとしてくれたものの、権限や環境の都合でうまくいかなかった模様。

そこで、手動で PowerShell を開き、uv をインストールして助け舟を出します。
PS> powershell -ExecutionPolicy ByPass -c "irm https://astral.sh/uv/install.ps1 | iex" Downloading uv 0.9.14 (x86_64-pc-windows-msvc) Installing to C:\Users\t_umemoto_ap-com\.local\bin uv.exe uvx.exe uvw.exe everything's installed!
uv のインストールが完了した後、Cline の画面に戻り「Proceed Anyways(とにかく続ける)」 をクリックして、先ほどの続きを行わせます。
何度か「Proceed Anyways」で背中を押し、試行錯誤してもらった結果...

設定ファイルを書き換えてもらい、


なんとか動くところまでできました。


コスト分析と「MFAの壁」
環境準備が整ったので、意気揚々と Cline に AWS のコストを聞いてみます。ここからは VSCode のチャット欄に自然言語で指示を出していきます。
まずは手始めに、シンプルに先月の利用料を聞いてみました。
プロンプト:
先月のAWSのコストを教えてください。
しかし、返ってきたのはエラーメッセージでした。

"error": "AWS Cost Explorer API error: ... explicit deny in an identity-based policy"
これは MFA 必須環境でよくある躓きポイントです。MCP Server の設定が、MFA 認証を経ていない default Profile を参照していたことが原因でした。Cline に依頼して Profile を書き換えてもらい、再度実行します。
プロンプト:
cline_mcp_settings.json の cost-explorer の設定にある AWS プロファイルを、default から mfa に変更してください。その後、MCP サーバーを再起動して、もう一度コスト分析を試みてください。


今度こそ成功しました。Cline は単に合計金額を返すだけでなく、内訳まで自律的に分析して提示してくれました。おかげで、段階的に深掘りしようと考えていた追加の指示も不要になりました。

最後に、この分析結果をレポートにして作成してもらいます。
プロンプト:
この分析結果をふまえてレポートをMarkdown形式で作成してください。ファイル名は cost_report_202511.md

Cline は瞬時に要点をまとめ、Markdown ファイルを生成してくれました。

作成されたレポートには、合計コストだけでなく、主要なコスト要因や必要に応じてテーブルまで綺麗に整形されていました。 マネジメントコンソールを開いてコピペして回る手間が、たった数行のチャットで完結しました。
終わりに
今回は Cline × MCP × AWS Cost Explorer を組み合わせて、VSCode から一歩も出ずに AWS のコスト分析を行ってみました。
MCP は非常に強力であり、自然言語で AWS のデータを自在に引き出すことができました。また、「コスト教えて」と言うだけで、勝手に内訳を分析し、「レポート書いて」と言えばファイルまで作ってくれる自律性には驚かされました。
ただ、便利な反面、uv コマンドの有無や MFA 認証の壁など、環境周りではまだ人間のサポート(トラブルシューティング)が必要な場面もありました。
しかし、一度環境が整ってしまえば、毎月の面倒なコスト確認作業が 「Cline、先月のレポート作っといて」 の一言で終わる未来が見えました。 皆さんもぜひ、明日の業務効率化のために MCP 環境を整えてみてはいかがでしょうか。
引き続き エーピーコミュニケーションズ Advent Calendar 2025 をお楽しみください!
お知らせ
APCはAWS Advanced Tier Services(アドバンストティアサービスパートナー)認定を受けております。

その中で私達クラウド事業部はAWSなどのクラウド技術を活用したSI/SESのご支援をしております。
一緒に働いていただける仲間も募集中です! 今年もまだまだ組織規模拡大中なので、ご興味持っていただけましたらぜひお声がけください。