DAY2 Keynoteで語られた「AIで守る」Zscaler Platform
こんにちは、エーピーコミュニケーションズ 0-WANの山根です。
ZenithLive'26 参加レポートも、今回で第4部となりました。
第一部ではZenithLive全体の雰囲気やDAY1の大きな流れを、第二部ではAI Security Platformを中心とした新機能の概要を、第三部ではMCPやAI Agentなどの技術的な解説をお届けしました。
そして最終回となる今回は、DAY2 Keynoteで語られたZscaler Platform全体の進化についてまとめます。
ZenithLive26全リンク集
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DAY1は「AIをどう安全に使うか」というテーマが中心でした。
一方でDAY2は、さらに視野が広がり、ZscalerそのものがAIを活用して、ゼロトラスト、SASE、データセキュリティ、サイバー防御、SecOpsをどう進化させていくのかという内容でした。
個人的には、今回のZenithLive'26全体を通じて、DAY2のメッセージは非常に重要だったと感じています。
AI時代のセキュリティは、単に「AIアプリを制御する」だけでは不十分です。
人、デバイス、アプリ、クラウド、データ、ワークロード、そしてAI Agentまでを含めて、企業活動全体をどう守るのか。
DAY2では、その答えとしてZscaler Platform全体の進化が示されました。

DAY2の大きなテーマは「AIを守る」から「AIで守る」へ
DAY1では、AIアプリ、AI Agent、MCP Server、AIモデル、プロンプト、データ漏えいといった、AI利用そのものに対するセキュリティが中心でした。 DAY2ではそこから一歩進み、Zscaler Platform全体にAIを組み込み、運用・分析・検知・対応を高度化していく方向性が語られました。 大きく整理すると、DAY2のテーマは以下のようになります。
- Zscaler PlatformをAI時代に合わせて再定義する
- 管理者・運用者の体験をAI Agentで変える
- ZDX、ZPA、Data Security、SecOpsにAgentic AIを組み込む
- 攻撃者もAIを使う前提で、防御側も機械速度で対応する
- ゼロトラストを、人・デバイス・アプリだけでなく、AI Agentやワークロードにも広げる
DAY2を一言で表現するなら、「AIを守る」から「AIで守る」への進化だったと思います。

Zscaler Vision:ネットワークではなく、ビジネスポリシーでつなぐ
DAY2の冒頭で示されたのが、Zscalerのビジョンです。
Any-to-Any Zero Trust communication using business policies, not networks
これは非常にZscalerらしいメッセージだと感じました。
従来のネットワークセキュリティでは、拠点、VPN、ファイアウォール、ネットワークセグメントといった単位で制御することが多くありました。
しかしAI時代の企業環境では、守るべき対象が大きく変わっています。
社員だけでなく、パートナー、委託先、AI Agent、ワークロード、クラウド上のアプリ、SaaS、データ、MCP Serverなど、接続元も接続先も多様化しています。
このような環境では、「ネットワーク的につながっているか」ではなく、誰が、何に、どのような目的で、どの条件でアクセスしてよいのかをビジネスポリシーとして制御する必要があります。
Zscalerが掲げるZero Trust Exchangeは、まさにその中核です。
DAY2では、このZero Trust Exchangeを中心に、以下のような領域を統合していく姿が示されました。
- Zero Trust Users
- Zero Trust Branch
- Zero Trust Cloud
- Zero Trust AI Agents
- Internet/SaaS/Private Apps/AI Apps
- AI Security
- Data Security
- Cyber Protection
- Agentic SecOps
これまでZscalerは、ZIAやZPAを中心に「安全なアクセス」を提供してきました。
しかし今回の発表を見ると、今後は単なるアクセス制御にとどまらず、企業のセキュリティ運用全体を支えるプラットフォームとして進化していく方向性がより明確になったと感じます。

Z-AGENT Framework:Autonomous SASEの基盤
DAY2の大きな発表の一つが、Z-AGENT Frameworkです。
Z-AGENT Frameworkは、Zscalerが目指すAutonomous SASEの基盤として紹介されました。
各製品グループに対応したAI Agent群を用意し、それぞれのAgentが特定のタスクやスキルに特化して動作する、という考え方です。
ここで面白かったのは、単に「管理画面にAIチャットが付きます」という話ではなかったことです。
Zscalerの操作体験そのものを、従来のUI中心の世界から、AI Agentと対話しながら運用する世界へ変えていく。
つまり、管理者がすべてをクリックして確認するのではなく、AI Agentに質問し、調査させ、推奨を受け取り、必要に応じて修復まで進める世界観です。

印象的だったのが、以下のメッセージです。
The best interface is no interface
これまでの管理画面は、どうしても「人が画面を見て、フィルターして、ログを追って、原因を探す」前提でした。
もちろん、これはこれで重要です。
しかし、環境が複雑化し、AI Agentやクラウド、SaaS、データ、ワークロードが絡み合う中で、人間がすべてを目視で追い続けるのは限界があります。
DAY2で語られた世界では、管理者は自然言語で問いかけます。
「この拠点のユーザー体験が悪化している原因は?」
「このユーザーがアクセスしているアプリを分類して」
「このポリシーに関係しているアプリを教えて」
「リスクの高いアセットを優先度順に出して」
このような問いに対して、Z-AGENTが裏側でデータを集約し、分析し、必要なビューを生成していく。
これは、Zscaler管理者の働き方を大きく変える可能性があると感じました。


ZDX Agent:障害調査は「見る」から「聞く」時代へ
Z-AGENT Frameworkの具体例として紹介されたのが、ZDX Agentです。 ZDXは、ユーザーのデジタルエクスペリエンスを可視化する製品ですが、今回の発表ではそこにAgentic AIが組み込まれ、トラブルシューティングを大きく効率化するデモが行われました。 従来、ユーザーから「Teamsが遅い」「Salesforceが重い」「Zoomが不安定」といった問い合わせが来た場合、運用者は複数の観点で原因を切り分ける必要がありました。
- 端末の問題なのか
- Wi-Fiの問題なのか
- ISPの問題なのか
- Zscalerまでの経路なのか
- アプリ側の問題なのか
- CPUやメモリなど端末リソースの問題なのか
これらを一つずつ確認するのは、かなり手間がかかります。
ZDX Agentのデモでは、管理者が自然言語で質問すると、Agentが調査計画を立て、関連データを確認し、原因を自動で整理していました。

例えば、Newarkのユーザーでデジタルエクスペリエンスが悪化しているケースでは、ZDX Agentが経路を分析し、Xfinity ISP側の遅延が主な原因であることを示していました。
端末やWi-Fiではなく、ISP経路上のボトルネックであると切り分けてくれるため、運用者は次のアクションに移りやすくなります。

別の例では、端末のCPUが100%近く張り付き、メモリも高負荷になっているケースが紹介されました。
原因としてAdobe Premiere Proのプロセスが大きくCPUを消費していることが示され、ネットワーク遅延と端末負荷の複合要因として整理されていました。
さらに、推奨アクションだけでなく、管理者が定義したRemediation Jobにつなげる流れも紹介されました。
たとえば対象プロセスを停止するスクリプトを選択し、対象端末に対して実行する、といった運用です。
ZDXの価値はこれまでも「見える化」にありましたが、今後はさらに進み、見える化した情報をAI Agentが解釈し、原因分析と対応候補まで出してくれる世界になります。
ZPAの進化:アプリを見つけ、分類し、守るところまで自動化へ
次に印象的だったのが、ZPAの進化です。
ZPAはこれまで、プライベートアプリケーションへのゼロトラストアクセスを実現する中核製品として位置づけられてきました。
今回のDAY2では、そこにAutonomous SegmentationやApplication Access Governanceの考え方が加わり、より高度なアプリケーションアクセス管理へ進化していく方向性が示されました。

ZPAで重要になるのは、単に「ユーザーをアプリに接続する」ことではありません。
本当に重要なのは、以下のような問いに答えることです。
- どのアプリが存在しているのか
- そのアプリは何のカテゴリなのか
- 誰がそのアプリを使っているのか
- そのアプリのオーナーは誰なのか
- そのアプリはミッションクリティカルなのか
- 脆弱性やリスクはあるのか
- どのポリシーでアクセスが許可されているのか
- 本当に最小権限になっているのか
これらを人手で整理するのは大変です。
特に大規模環境では、アプリ数もユーザー数も多く、部門やオーナー情報も分散しがちです。
そこで、AI/MLを使ってアプリの種別を判定し、アプリごとのDNA Profileを作り、リスクやメタデータを付与していく流れが紹介されました。
さらに、ZPA AgentによるData Insightsのデモでは、自然言語で質問すると、アプリタイプ別の内訳や、特定ユーザーが過去14日間にアクセスしたアプリ一覧、適用されたアクセスポリシーなどを確認できる様子が紹介されました。

この発表を見て、ZPAの価値がさらに広がっていると感じました。
従来のZPA提案では、「VPNを置き換える」「社内アプリへの安全なアクセスを実現する」という表現が多かったと思います。
しかし今後は、アプリケーションアクセスの可視化、分類、ガバナンス、最小権限化、保護まで含めた提案が重要になっていきそうです。

さらに今後のロードマップとして、ZPA Autonomous App ProtectionやVirtual Patchingの話も紹介されました。
App Connectorがアプリの前段にいることを活かし、AI Harnessでアプリをスキャンし、脆弱性やリスクに応じて動的にポリシーや保護を適用するという考え方です。
「パッチを当てるまでの間、アプリをどう守るのか」
「既存のApp Connectorを活用して、アプリ前段でどう防御するのか」
このあたりは、今後のZPA提案において非常に面白いテーマになると思います。
Health360:Zscaler運用を“感覚”ではなく“スコア”で語る
DAY2でもう一つ大きな発表だったのが、Health360です。
Health360は、Zscaler環境全体の健全性を可視化し、ベストプラクティスや推奨事項を提示する機能として紹介されました。
スライドでは、全てのZscaler顧客向けに提供されることが示されていました。

Zscaler環境を運用していると、以下のような観点を定期的に確認する必要があります。
- Client Connectorの状態
- App Connectorの状態
- Branch Connectorの状態
- Tunnelの状態
- Service Edgeの状態
- Best Practiceの準拠状況
- 製品ごとの利用状況
- 最近のインシデント
- どの領域に改善余地があるか
これらを個別の画面やログで確認するのではなく、Health360では統合的に確認できるようになります。 特に良いと感じたのは、単なる監視画面ではなく、エグゼクティブ向けのレポーティングにも使える点です。 たとえば、月次報告やQBRの場で、
- 現在のZscaler環境の健全性はどうか
- どの製品がどれくらい利用されているか
- どの領域で改善が必要か
- 次にどの施策を打つべきか
を、スコアや推奨事項とともに説明できるようになります。

これまで、Zscaler運用の価値をお客様に説明する際には、製品ごとのレポートや個別のログを組み合わせることが多かったと思います。
Health360が活用できるようになると、運用の状態や改善提案をより分かりやすく伝えられるようになりそうです。
エンドユーザー体験の進化:セキュリティは“見えない”ほど良い
DAY2では、エンドユーザー体験についても触れられました。
新しいZscaler Client Connector、いわゆるZCCについて、シンプルで高速、使いやすいインターフェースへ進化していくことが紹介されました。
また、バックエンド側では新しいUnified Tunnelが導入され、接続の高速化や安定性向上を狙っているとのことでした。
エンドユーザー体験に関するメッセージとして印象的だったのは、正常時はできるだけ見えないことです。
セキュリティ製品は、ユーザーの業務を邪魔してしまうと、どうしても不満につながります。
理想的には、正常に動いているときは意識されず、問題が発生したときだけ、何が起きているのか、次に何をすればよいのかが分かりやすく提示されることです。
また、ブラウザベースのセキュリティオプションとして、以下のような選択肢も紹介されました。
- Zero Trust Cloud Browser Isolation
- Zscaler Zero Trust Browser Extension
- Dedicated Enterprise Browser
特にZero Trust Browser Extensionは、軽量なブラウザ拡張として、アンマネージドデバイスや委託先端末などでもセキュリティ機能を展開しやすくする考え方です。
たとえば、Windows Firewallが無効になっている端末では、プライベートアプリへのアクセスをブロックし、ユーザーに必要な対応を促す。
その後、ポスチャーチェックを満たせばアクセス可能になる、という流れが紹介されました。
マネージドデバイスではZCC、アンマネージドデバイスではブラウザ拡張やBrowser Isolation、より厳格な環境ではDedicated Enterprise Browser。
このように、利用シーンに応じて複数の選択肢を組み合わせる方向性です。
セキュリティを強化しながら、ユーザー体験を損なわない。
このバランスは、今後さらに重要になっていくと感じました。
Zero Trust Branch/Cloud/Microsegmentation/Business Continuity
DAY2では、SASE基盤そのものの進化についても多く語られました。
Zero Trust Branch、Zero Trust Cloud、Microsegmentation、Business Continuity Cloudなど、Zscaler Platformの土台となる部分です。
まず、Zero Trust Branchについては、従来の複雑なネットワークアーキテクチャをシンプルにし、支店・拠点におけるセキュリティをゼロトラスト化する流れが紹介されました。
従来型のネットワークでは、拠点間をつなぎ、ネットワーク全体が広い攻撃面になってしまうことがあります。
Zero Trust Branchでは、Red Connectorやゼロトラストセグメンテーションの考え方を組み合わせ、拠点環境もZero Trust Exchangeに接続していく方向性です。
また、Microsegmentationについては、Kubernetesやクラウド環境に対する対応が紹介されました。

スライドでは、Amazon Elastic Kubernetes Service、Google Kubernetes Engine、Azure Kubernetes Serviceといった環境が示されていました。
クラウドネイティブ環境やコンテナ基盤では、アプリケーション間通信が複雑になりやすいため、マイクロセグメンテーションによる制御はますます重要になります。
さらに、Zscaler Platform全体のスケーラビリティとレジリエンシーについても紹介されました。

スライド上では、グローバルデータセンターの拡張、1日あたりのトランザクション、日次シグナルの規模などが示され、今年は新しいロケーション追加や既存拠点のキャパシティ増強が行われていることが語られました。
そして、Business Continuity Cloudについても触れられました。

大規模なクラウド障害や接続性の問題が起きた場合でも、事業継続性を確保するための選択肢として、Customer HostedとZscaler Managedのモデルが示されました。
特にZscaler Managed Business Continuity Cloudは、通常のZscalerデータセンター群とは分離された形で提供される考え方で、ミッションクリティカルな環境を支えるための重要な選択肢になりそうです。
ゼロトラストは「アクセス制御」の話だけではなく、今後は事業継続性やレジリエンシーを含めた基盤設計として考える必要があると感じました。
Data Security:DSPMとDLPをつなぎ、AIで運用を回す世界へ
DAY2では、データセキュリティについてもかなり踏み込んだ発表がありました。
現在、企業のデータは爆発的に増えています。
さらに生成AIの利用が広がることで、データがどこにあり、誰が使い、どのAIサービスに渡り、どのように保護されているのかを把握することが難しくなっています。

Zscalerが示した方向性は、Adaptive Data Defenseです。

これは、DSPMとDLPを別々のものとして扱うのではなく、連携させる考え方です。
DSPMでは、データがどこに存在し、どのような状態にあるのかを把握します。
DLPでは、データが外部に流出しないように制御します。
重要なのは、この二つを分断せず、データの状態やリスクに応じてDLPポリシーやワークフローを適応させることです。
DAY2では、AIを使ったデータセキュリティ運用の自動化も紹介されました。
たとえば、複数チャネルで発生するDLPアラートを集約し、AIがラベル付けや信頼スコアを付与します。
さらに、Remediation Centerでは、単にアラートを並べるのではなく、「次に何をすべきか」という推奨アクションを提示します。
また、Action Plan Dashboardでは、繰り返し発生しているエスカレーションパターンをAI Agentが検出し、対応ワークフローを提案する流れが紹介されました。
特に面白かったのは、ポリシーチューニングの自動化です。
DLPでは、誤検知、いわゆるFalse Positiveが課題になりがちです。
たとえば、URL内の数字列が口座番号のように誤検知されるケースがあります。
これに対してAI Agentが「これは誤検知の可能性が高い」と判断し、ポリシーオーナーにチューニング案を提示します。
ポリシーオーナーが承認することで、今後のノイズを削減します。
データセキュリティは、導入するだけでなく、継続運用が非常に重要になってきます。
その運用負荷をAIで下げていく方向性は、非常に現実的で価値があるなと感じました。
AI時代の攻撃デモ:攻撃者も“Agentic”になる
紹介されたAI時代の主要リスクは、大きく以下の3つでした。
- Frontier AI Modelsによる自動化攻撃
- AIを活用したソーシャルエンジニアリング
- サプライチェーン攻撃
まず、Frontier AI Modelsについては、単なる話題性ではなく、実際に多段階の攻撃推論が可能になっていることが語られました。


複数のCVEを組み合わせて攻撃経路を作る、トークンやサービスアカウントを悪用して次のステップへ進む、といった流れが、AIにより自動化・高速化されているという説明です。
次に、AIソーシャルエンジニアリングの例として、ClickFixとAI Phishingを組み合わせたランサムウェア攻撃が紹介されました。

AIフィッシングメール、Microsoft Teams通話、ITヘルプデスクなりすまし、悪意あるスクリプト実行、RMMツール配布、データ窃取、ランサムウェア実行という流れです。
このような攻撃では、技術的な脆弱性だけでなく、人間の判断や業務フローも狙われます。
3つ目がサプライチェーン攻撃です。

オープンソースパッケージやライブラリ、侵害された技術企業、サードパーティ契約者、悪意ある内部者などが攻撃対象として示されました。
特にAI時代には、開発プロセスやコーディングAgent、スキルファイル、CI/CDパイプラインなども攻撃対象になります。
Hallucination Techデモ:AI Agentによる多段階攻撃シナリオ
DAY2の中でも、個人的に最も印象に残ったのが、架空の企業「Hallucination Tech」を標的にしたAI Agent攻撃デモです。


このデモでは、AI Agentが複数のサブエージェントを使いながら、多段階の攻撃を進めていく様子が示されました。
攻撃の流れは非常にリアルでした。
まず、Recon Agentが外部アタックサーフェスを探索します。
公開されているクラウドインスタンス、VPN、ファイアウォール、Webアプリケーションなどを探し、さらにHallucination TechがBug Bounty Programを持っていることを発見します。



次に、Agentが研究者プロフィールを使ってBug Bounty Programに登録し、ルールや対象範囲の情報を取得します。
これは攻撃者にとって、検知を避けながら探索するための材料になります。
その後、Exploit Agentが公開されているGrafanaサーバーを見つけ、複数の中程度のCVEをチェーンして侵害します。
侵害後は、開発者のアイデンティティを奪取し、GitHub Enterprise上のプロジェクトや開発者用のSKILL fileにアクセスします。
そして、SKILL fileを改ざんし、開発者がコーディングAgentを使う際にPowerShellスクリプトが実行されるように仕込みます。

ここが非常に怖いポイントでした。
AI時代の開発では、開発者がコーディングAgentを利用する機会が増えます。
そのとき、Agentが参照する設定ファイルやスキルファイルが改ざんされると、開発者自身が意図しない形で悪意あるスクリプトを実行してしまう可能性があります。
その後、InfoStealerがVault Token、キー、ソースコード片などを収集し、GitHub経由で外部に送信します。
さらに、顧客向けソフトウェアアップデートにバックドアを埋め込むことで、サプライチェーン攻撃につながります。


このデモで印象的だったのは、攻撃が単発ではなく、目的達成に向けて複数の道を試しながら進むことです。
AI Agentは、偵察、侵害、横展開、データ窃取といったステージをサブエージェントに分担させ、並列に進めていきます。
攻撃者側もAgenticになる。
これは、今回のZenithLive'26全体を通じて最も強いメッセージの一つだったと思います。
Breaking the Kill Chain:Zscalerによる4段階の防御
攻撃デモの後には、それをどう防ぐのかが整理されました。 Zscalerの防御戦略は、攻撃ライフサイクルに合わせて大きく4段階で説明されました。
- Eliminate Attack Surface
- Prevent Compromise
- Prevent Lateral Propagation
- Prevent Data Exfiltration

Step 1:Eliminate Attack Surface
まずは攻撃面をなくすことです。
Frontier AI Modelsは、インターネット上に露出しているアセットを機械速度で見つけます。
公開IP、VPN、ファイアウォール、公開Webアプリ、クラウド上のサービスなど、見えているものは攻撃対象になります。
そのため、ZPAの背後にアプリを置き、外部から直接見えない状態にすることが重要です。
「攻撃者から見えないものは攻撃しにくい」という、ゼロトラストの基本に立ち返る内容でした。
また、Zscaler Exposure Managementによるアセット可視化、優先順位付け、修復ワークフローも紹介されました。
Step 2:Prevent Compromise
次は、初期侵害を防ぐことです。
ここでは、Inline Protection、Sandbox、DNS Security、AI Security、Zero Trust Browser、Endpoint Context、フィッシング耐性MFA、TLS Inspectionなどが紹介されました。
特に強調されていたのが、TLS Inspectionです。
攻撃者はGitHubなど正規サービスを使ってペイロード配布やデータ窃取を行うことがあります。
そのため、暗号化通信の中身を適切に検査できることは非常に重要です。
また、WebSocket、HTTP/3、Web Transport Protocolなど、新しいプロトコルへのInspection対応も紹介されました。
さらに、Quantum-Safe SSEとして、PQCの可視化、PQC Inspection、Quantum-Safe Connectivityの方向性も示されました。
Sandboxについては、従来のInline/APIだけでなく、Endpoint側にも広げていく方向性が紹介されました。
これにより、悪意あるバックドアやSKILL fileをブロックするシナリオが示されました。
Step 3:Prevent Lateral Propagation
3つ目は、侵害後の横展開を防ぐことです。
ここで重要なのは、ユーザーとアプリのセグメンテーションです。
もし一つのアイデンティティや一つの端末が侵害されても、アクセスできる範囲を最小化しておけば、被害範囲を限定できます。
さらに、Deceptionの活用も紹介されました。
Deceptionは、攻撃者や悪意あるAI Agentに対してデコイを配置し、アクセスされた時点で高精度なシグナルを得る仕組みです。
通常ユーザーが触る理由のないデコイにアクセスがあれば、それは非常に強い異常のサインになります。
AI Agentは複数の経路を並列に試すため、適切にデコイを配置しておくと、攻撃の早い段階で検知できる可能性があります。
これはAI時代の防御において、かなり重要な考え方だと感じました。
Step 4:Prevent Data Loss
最後は、データ流出の防止です。
攻撃者の最終目的は、多くの場合データです。
ソースコード、認証情報、トークン、顧客データ、機密文書などを盗み出すために、あらゆるチャネルが使われます。
そのため、DLPはインラインだけでなく、メール、エンドポイント、SaaS、クラウド、APIなど、複数チャネルにまたがって適用する必要があります。
また、AI時代には「どのデータをAIに渡してよいのか」「AIが扱っているデータは何か」という分類も重要になります。
DAY1で語られたAI Security Platformの話と、DAY2のData Securityの話は、ここでつながってきます。
Agentic SecOps:SOCは“人が頑張る場所”から“AIと人が協働する場所”へ
DAY2の最後に向けて、Agentic SecOpsの話が展開されました。
攻撃者がAIを使って機械速度で攻撃してくるなら、防御側も機械速度で対応する必要があります。
そのための構想として示されたのが、Agentic SOCです。
Zscaler Agentic SecOps Architectureでは、以下のようなレイヤーが示されました。
- Data Lake
- Detections
- Context Graph
- Agentic SecOps
- Closed-loop Remediation
- Ticketing/CMDB/SIEM/SOAR連携
- Expert Human Assistance
Zscalerデータだけでなく、Identity、Endpoint、Cloud、Vulnerability、Exploit情報などを統合し、Context Graphとしてつなげる。
その上でAI Agentが検知、調査、トリアージ、推奨、要約を行う。
そして必要に応じて、自動封じ込めや継続的なハードニングにつなげる構想です。
従来のSOCでは、大量のアラートを人間が確認し、優先順位をつけ、調査し、対応する必要がありました。
しかし、AI Agentがアラートを統合し、攻撃シーケンスを整理し、MITRE ATT&CKにマッピングし、影響を受けたアセットやアイデンティティを示すことができれば、SOCアナリストはより重要な判断に集中できます。
さらに、Zscaler MDRも紹介されました。

スライドでは、大量のテレメトリ、セキュリティアラート、分析マッチから、実際に対応すべき脅威へ絞り込む流れが示されていました。
99.9%以上のノイズ削減というメッセージも印象的でした。
また、Zscaler Threat Huntingについても紹介され、専門チームによるプロアクティブな脅威ハンティングが、SOCチームを拡張する役割を果たすと説明されました。

SOCの未来は、人が不要になるという話ではありません。
むしろ、人が本当に判断すべきところに集中できるよう、AI Agentが調査・相関・要約・推奨を支援する世界です。
DAY2で示された、AI時代に向けた6つの防御パス
DAY2の終盤では、AI時代に向けた防御の進め方として、6つのポイントが示されました。

内容は以下です。
- Hide Your Attack Surface
- Implement Best Practices for Zero Trust
- Minimize Blast Radius with Segmentation & Deception
- Manage Risk of AI Assets
- Discover, Prioritize, and Fix Vulnerabilities
- Implement Agentic SOC & Continuous Red Teaming
この6つは、今回のZenithLive'26全体のまとめとしても非常に分かりやすい内容でした。
攻撃面を隠す。
ゼロトラストのベストプラクティスを実装する。
セグメンテーションとDeceptionでブラスト半径を小さくする。
AIアセットのリスクを管理する。
脆弱性を発見し、優先順位をつけ、修正する。
Agentic SOCと継続的なRed Teamingを実装する。
これは単なる製品紹介ではなく、AI時代の防御戦略そのものだと感じます。
ZenithLive'26 参加レポートまとめ
全4回にわたって、ZenithLive'26の参加レポートをお届けしました。
第1部では、イベント全体の雰囲気とDAY1の大枠を紹介しました。
第2部では、DAY1で発表されたAI Security PlatformやAI Access Graph、AI Broker、Secure AI Accessなどの新機能を整理しました。
第3部では、MCP、MCP Server、AI Agent、AI Red Teaming、Prompt Hardeningなど、技術的に理解しておきたいポイントを解説しました。
そして今回の第4部では、DAY2 Keynoteで語られたZscaler Platform全体の進化、Z-AGENT、ZDX Agent、ZPA、Health360、Data Security、Cyber Protection、Agentic SecOpsについてまとめました。
今回のZenithLive'26を通じて、私が一番強く感じたのは、AI時代のゼロトラストは、すでに構想段階ではなく実装フェーズに入っているということです。
- AIを安全に使う。
- AI Agentを制御する。
- AIで運用を効率化する。
- AIで攻撃を検知する。
- AIによる攻撃に備える。
このすべてが、今後のセキュリティにおいて重要なテーマになります。
そして、その土台になるのがゼロトラストです。
Zscalerは、Zero Trust Exchangeを中心に、AI Security、Data Security、Cyber Protection、Agentic SecOpsを組み合わせ、AI時代のセキュリティプラットフォームへ進化しようとしています。
今回の現地参加を通じて、Zscalerの今後の方向性を直接感じることができ、大変貴重な機会となりました。
また、Zscaler様、パートナーの皆様、現地でお話しさせていただいた皆様との交流を通じて、多くの学びと刺激をいただきました。
0-WANとしても、今後もゼロトラスト領域、AIセキュリティ領域、そして運用高度化の領域にしっかり取り組んでいきたいと思います。
インフラ領域におけるセキュリティ、ゼロトラスト、SASE、Zscaler活用、AI時代のセキュリティ対策に課題があるお客様は、ぜひご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。