
こんにちは。クラウド事業部の遠見です。
本記事は、Microsoft Fabricのリアルタイムインテリジェンス(Real-Time Intelligence)を実際に検証したエンジニアが、内容をできる限り客観的に共有することを目的に作成しました。
現在、Microsoft Learn(以下、MS Learn)で、Microsoft Fabricの学習を進めています。
その中でも、リアルタイムデータストリーム用の分析ソリューションを作成できる「リアルタイムインテリジェンス」の機能が面白かったため、今回はその検証結果をレポートします。
- はじめに
- MS Learnの演習(ハンズオン)資料
- 検証日時と環境
- 検証環境構築
- 【検証】キャプチャされたデータに対するクエリ実行(KQL)
- 【検証】リアルタイムダッシュボードの作成
- 【検証】アラート(Activator)の作成
- 【検証】テストアラート実行
- リソースのクリーンアップ
- まとめ
- お知らせ
はじめに
Microsoft Fabricの学習計画
Microsoft Fabric学習のため、MS Learnにて以下の受講計画を立てています。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1 | MS Learn「Microsoft Fabricの使い方を始める」(初級)を完了させる |
| 2 | MS Learn「マイクロソフト認定: ファブリック分析エンジニア アソシエイト」を完了させる |
| 3 | 「DP-600」を受験し、合格する |
「Microsoft Fabricの使い方を始める」コースは、現状以下の構成となっています。
個人的な実施状況と今回の記事がどのポイントかを併せて記載しました。
| コース | 実施状況 |
|---|---|
| Microsoft Fabric を使用したエンドツーエンドの分析の概要 | 済 |
| Microsoft Fabric でレイクハウスを始める方法 | 済 |
| Microsoft Fabric で Apache Spark を使用する | 済 |
| Microsoft Fabric で Delta Lake テーブルを操作する | 済 |
| Microsoft Fabric を使用してプロセスとデータ移動を調整する | 済 |
| Microsoft Fabric でデータフロー Gen2 を使用してデータを取り込む | 済 |
| Microsoft Fabric のデータウェアハウスを始めましょう | 済 |
| Microsoft Fabric のリアルタイムインテリジェンスの使用を開始する | ★今回の記事 |
| Microsoft Fabric でデータサイエンスを始める | 未実施 |
| Microsoft Fabric 環境を管理する | 未実施 |
リアルタイムデータ分析とリアルタイムインテリジェンス
リアルタイムデータ分析とは、蓄積された過去のデータではなく、システムを流れるストリームデータに対して直接処理を行い、ほぼリアルタイムでの分析と対応を可能にする手法です。
Webサイトのクリックや株価の変動といったイベントが連続するストリームを処理することで、パターンの検出や即時のアクション実行が可能になります。
Microsoft Fabricのリアルタイムインテリジェンスは、このリアルタイム分析に必要な機能を1つのプラットフォームに統合したものです。
エンドツーエンドの処理を実現するための主なコンポーネントとその役割は以下の通りです。
| コンポーネント | 役割 |
|---|---|
| Eventstream | データの取り込み、加工(フィルタリング等)、および宛先への転送を行う |
| Eventhouse | ストリーミングデータの高速な蓄積に最適化されたデータベース |
| KQL Queryset | KQL(Kustoクエリ言語)を使用して、データの探索や分析を行うワークスペース |
| Activator | データを常時監視し、特定の条件を満たした際にアラートやアクションを自動実行する |
| Real-Time ハブ | 組織内のあらゆるストリーミングデータを一元的に発見・管理できる場所 |
| Real-Time ダッシュボード | データベース内の最新データを自動更新で視覚化する対話型ボード |
Kusto(クスト)の由来と特徴
KQL(Kustoクエリ言語)で使われている Kusto(クスト) という名前の由来が少し気になったので、深堀しました。
元々Azure Data Explorer(ADX)の開発コードネームとして使われていた名称です。
この名前は、有名な海洋探検家であり映画監督でもあるジャック=イヴ・クストーにちなんで名付けられました。
これには、広大な「データの海を探検(Explore)する」という意味が込められているそうです。
Kusto was the original code name for Azure Data Explorer - a nod to the famous ocean explorer, filmmaker, researcher, and more, Jacques Cousteau.
That's because Azure Data Explorer aims to “explore an ocean of data."
Microsoft Fabricのドキュメントの所々に、クストーに関連する情報が使われていたりもします。
One can subtract (but not add) two datetime values to get a timespan value expressing their difference.
For example, datetime(1997-06-25) - datetime(1910-06-11) is how old was Jacques-Yves Cousteau when he died.
また、技術的な面でのKQLの最大の特徴は、Unixのコマンドラインのように|(パイプ)を使用して処理を次々と繋いで記述していく点にあります。
これにより、広大なデータソースに対する複雑な探索や条件指定による分析も、直感的にわかりやすく構築できるようになっています。
StormEvents | where StartTime between (datetime(2007-11-01) .. datetime(2007-12-01)) | where State == "FLORIDA" | count
なぜ「リアルタイムインテリジェンス」の機能が面白いと思ったのか
今回の検証を通じてこの機能に魅力を感じたのは、データの動きがダイレクトに見える点です。
ハンズオンで扱った株価データのように、刻一刻と変化するストリームデータがその場でグラフ化され、即座にアクションに繋がる流れには、データが生きて動いているような面白さがあります。
また、紹介されているユースケースがビジネスや生活に身近なものばかりだったことも、面白さを感じた理由の一つです。
| 分類 | 具体的なユースケース |
|---|---|
| 設備・品質管理 | 失敗した食料品店の冷凍機から食べ物を移動するように店長に警告する |
| 設備・品質管理 | 温度変化が傷みやすい商品に影響を与える可能性がある場合に通知を送信する |
| 物流・運用 | 予想された期間内に出荷が更新されていない場合にアラートをトリガーする |
| 物流・運用 | データ処理ワークフローの異常やエラーに即座に対応する |
| マーケティング | 製品の売上や同じ店舗の売上が減少したときに広告掲載やアクションを開始する |
| 顧客体験 | アプリやWebサイトのユーザーエクスペリエンスに影響するリアルタイムの問題に注意を促す |
| 金融 | 顧客の勘定残高が特定のしきい値を超えたときにアラートを送信する |
データが溜まってから分析するのではなく、今起きていることに即座に反応する仕組みをMicrosoft Fabricで完結できる点に、大きな可能性を感じました。
MS Learnの演習(ハンズオン)資料
今回の演習は以下になります。
しかしながら執筆時点(2026年3月31日)では、 「演習開始」のリンクが切れています。
確認したところ、URLの「real-time-analytics」が「real-time-Intelligence」に変わっています。
以下の「Microsoft Fabric の演習」にて、演習リンク一覧が確認できます。
今回利用する演習は、この中の「Microsoft Fabric のリアルタイムインテリジェンスの使用を開始する」になります。
検証日時と環境
クラウドサービスのUIは頻繁に変更されるため、検証日時と環境を記載しておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検証日時 | 2026年3月31日 |
| 環境 | Microsoft Fabric試用版 |
Microsoft Fabricには、本記事の執筆時点では60日間利用可能な試用版が提供されています。
今回はこれを利用しています。
検証環境構築
基本的に演習手順通りに進めることができますが、手順に記載のないところやつまづきポイントもあります。
この項では、そういったポイントを中心に記載します。
試用版の開始
Microsoft Fabricの試用版を開始します。
参考にした手順は以下です。
Microsoft Fabricホームページにアクセスします。
組織のアカウント(仕事用または学校用メールアドレス)となっていますが、今回はAzure検証用に作成していたonmicrosoft.com形式のアカウントを使用します。
※ gmail.comやoutlook.jpなどの一般的な個人用フリーメールアドレスでは、Fabric試用版の登録はできません。

「送信」をクリックします。
【トラブルシューティング】サードパーティCookieの許可
ブラウザはGoogle Chromeを利用していましたが、サードパーティCookieの設定によってブロックされていました。
一時的にサードパーティCookieを許可することで、サインインできました。
サインイン完了後、ブロックに戻しました。

サインインすると、 「Microsoft Fabric freeを選択されました」ダイアログが表示されます。
「アカウントの作成」で、必要事項を入力します。

入力し終わったら、下部の「作業の開始」をクリックします。

「詳細の確認」で、下部の「作業の開始」をクリックします。

Microsoft Fabricホームページが表示されます。

プロフィールのメニューから「無料試用版」をクリックすることで、無料で使える「Fabric 試用容量」が割り当てられます。
ワークスペースの作成
Microsoft Fabricホームページからワークスペースを作成し、ストリーミングソースからリアルタイムデータを検索して取り込む準備を整えます。

入力値
| 項目名 | 設定値 / 選択内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 名前 | Fabric-Hands-on-tomi |
任意(識別しやすい名前を入力) |
| 説明 | 空欄 | 任意(入力不要) |
| ドメイン | 空欄 | 変更不要(デフォルト) |
| ライセンス モード | Fabric 評価版 | 【最重要】これで全機能が利用可能になる |
| セマンティック モデルのストレージ形式 | 小さなセマンティック モデルのストレージ形式 | 変更不要(デフォルト) |
| テンプレート アプリ | チェックを外す (OFF) | 変更不要(開発者用機能のため今回は不要) |
| 詳細(連絡先など) | デフォルトのまま | 変更不要 |
入力し終えたら、 「適用」をクリックします。
画面が遷移し、指定した名前のワークスペースが表示されればOKです。

Eventstreamの作成
リアルタイム ハブを使用すると、ストリーミング データのソースを簡単に見つけて管理できます。
左側のメニューバーで、 「リアルタイム」をクリックします。
リアルタイム ハブの「ツアーを開始します」ダイアログが表示されますが、今回は演習手順の通り進めるので「開始する」をクリックします。

リアルタイム ハブの画面で「データの追加」をクリックします。
「株式市場」をクリックします。

「構成」ウィザードで、以下を入力します。

| 項目名 | 設定値 | 備考 |
|---|---|---|
| ソース名 | stock |
任意 |
| Eventstream名 | stock-data |
任意 |
| ストリーム名 | stock-data-stream |
自動反映 |
「次へ」をクリックします。
「確認および接続」で、設定した値が入っていることを確認し、 「接続」をクリックします。

接続が完了すると、 「Eventstreamを開く」ボタンが表示されるのでクリックします。

デザインキャンバスに stock ソースと stock-data-stream が表示されています。

Eventhouseの作成と接続
キャプチャしたデータを格納するためのテーブルとして、Eventhouseを作成します。
左側のメニュー バーで、「作成」をクリックします。
「新規」ページの「Real-Time Intelligence」セクションで、 「イベントハウス」をクリックします。

名前は演習に合わせて rti_eventhouse にしています。
「Create」をクリックします。

Eventhouse内には同じ名前のKQLデータベースが含まれており、ここから「データの取得」を選択してイベントストリームと接続します。
以下、少し演習手順と異なります。
KQLデータベースの rti_eventhouse > [Get data] > [Eventstream] > [既存のEventstream]をクリックします。

「Configure」ウィザードで、以下を入力します。

入力値
| 項目名 | 設定値 | 備考 |
|---|---|---|
| 宛先テーブル | stock |
データソースが格納されている場所 |
| Workspace | Fabric-Hands-on-tomi |
作成したワークスペースを選択 |
| Eventstream | stock-data |
作成した既存のストリームを選択 |
| データ接続名 | stock-table |
接続設定の識別名 |
「次へ」ボタンを使用して、データを検査します。 完了したら、 「終了」をクリックします。

「閉じる」をクリックします。

「取り消しますか?」ダイアログが表示されますが、すでに裏の画面で「テーブルの作成」と「マッピングの作成」が完了していれば問題ないです。
「はい、キャンセルします」をクリックします。

Eventstreamを確認すると、ストリームの宛先が表示されています。

【検証】キャプチャされたデータに対するクエリ実行(KQL)
Eventstreamによって、リアルタイムの株式市場データがKQLデータベースのテーブルに読み込まれるようになったため、クエリを実行してデータを確認します。
クエリペインを使用し、最初はテーブルの100行のデータを表示させるクエリを実行します。

次に、過去5分間の各株式コードの平均価格を取得するクエリに変更して実行しました。
数秒待ってから再度実行すると、リアルタイムストリームから新しいデータが追加され、平均価格が変化していく様子を確認できました。

【検証】リアルタイムダッシュボードの作成
クエリで取得したデータを基に、リアルタイムダッシュボードを作成してデータを視覚化します。
先ほどの過去5分間の平均株価を取得するクエリを選択し、ツールバーの [Save to Dashboard] > [To a new Dashboard] をクリックします。

名前に任意の値を入れ(今回は Stock Dashboard)、「作成」をクリックします。
「Open Dashboard」をクリックすると、ダッシュボードを表示できます。

タイル名はこの段階で変更しました。

ダッシュボードの編集モードを利用し、タイルのビジュアルの書式設定で視覚のタイプを「Column chart」、ビジュアル形式を「縦棒グラフ」に変更することで、リアルタイムの株価データをライブで分かりやすく視覚化できるようになりました。

【検証】アラート(Activator)の作成
Microsoft Fabricのリアルタイムインテリジェンスには、リアルタイムイベントに基づいてアクションをトリガーできる「Activator」という機能があります。
これを利用して、平均株価が特定の金額で増加したときにアラート(メール通知)が生成されるように設定しました。
ダッシュボードのツールバーで「Set alert」をクリックします。
「Select a tile to act on」で作成した「Average Prices」を選択し、「Select」をクリックします。

「規則の追加」が完了したら、「作成」をクリックします。

今回設定した入力値は以下です。
| 項目名 | 設定値 / 選択内容 | 備考 |
|---|---|---|
| ルール名 | Stock Alert |
任意 |
| クエリの実行間隔 | 5分間 | データをチェックする頻度 |
| チェック | イベントのグループ化のたびに | データの集約タイミング |
| グループ化フィールド | symbol(または 記号) | 監視の単位 |
| タイミング | avgPrice | 対象となる数値(平均価格) |
| 条件 | Increases by(または 次の値より大きい) | アラートのトリガー |
| Value | 100 |
変化量またはしきい値 |
| アクションの選択 | メール | 通知方法 |
| To | (自身のメールアドレス) | 送信先 |
| Subject | Stock Alert |
メールの件名 |
| Headline | Stock Alert の条件が満たされました |
メールの見出し |
| アイテム | 新しい項目の作成 | 保存先の指定 |
| 新しい項目名 | Stock Activator |
作成されるリソース名 |
【検証】テストアラート実行
短期的には株価の変動値がほとんどないため、ハンズオンの設定ではアラート発生しません。
そのため、以下の設定を変更し、意図的にアラートを発生させました。

| 項目 | 変更前の設定 | 変更後の設定 |
|---|---|---|
| 条件 | 増加幅 | 次の値より大きい |
| 値 | 100 | 100(株価が300〜2300程度のため確実に満たす) |
条件を「変化(増加幅)」から「絶対値(次の値より大きい)」に変更したことで、平均株価が100を超えた段階でActivatorからメールが送信され、履歴にアラートが記録されることを確認できました。

リソースのクリーンアップ
検証終了後は、作成したMicrosoft Fabricワークスペースを削除します。
まとめ
今回の検証を通じて、以下のようなリアルタイムインテリジェンスの一連の流れを体験することができました。
- Eventhouseの作成
- Eventstreamを利用したリアルタイムデータの取り込み
- KQLデータベースでのクエリ実行
- リアルタイムダッシュボードの作成
- Activatorを利用したアラート構成
Microsoft Fabricの試用版は無料でたくさん触ることができるため、今後もデータサイエンスなどの他の領域を含めて、引き続き検証を進めていきたいと思います。
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