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株式会社エーピーコミュニケーションズの技術ブログです。

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AI時代の"ゴールデンパス"、まだ誰も定義していないなら自分たちで定義してみた

こんにちは。ACS事業部の越川です。

2026年3月17日、SoftBank Tech Nightをオンラインで視聴しました。草間一人氏(PagerDuty / Platform Engineering Meetupオーガナイザー)のセッションテーマはこれでした。

「プラットフォームエンジニアリングはAI時代の開発者をどう救うのか」

https://sbtechnight.connpass.com/event/385812/sbtechnight.connpass.com

視聴後、社内でこんな話が上がりました。

「AI時代のゴールデンパスって、まだ誰も定義していないよね。インストラクション、Skills、ADR、このあたりがセットになるんじゃないか。要はコンテキストとも言えるのかも」

この言葉がずっと引っかかっていました。「ゴールデンパス」という概念と、自分が日々実践してきたことが、ぴったり重なって見えたからです。

「ゴールデンパス」とは何か

ゴールデンパスは、Spotify社が提唱し、内部開発者ポータルのBackstageで実装された概念です。

「開発者が最も生産的に働ける、推奨ルートをあらかじめ整備する」という考え方です。全員に同じツールを強制するのではなく、やりやすい道を舗装して、自然とそこを歩きたくなるようにする

具体的には、プロジェクトのテンプレート、CI/CDパイプライン、デプロイ方法などが「ゴールデンパス」として整備されます。新しいメンバーがジョインしたとき、「このルートを使えば迷わない」という道が最初から用意されている状態です。

なぜ今、AI時代のゴールデンパスが必要なのか

AIの登場で、開発者体験に新しいレイヤーが加わりました。

コードを書くとき、設計を考えるとき、ドキュメントを整理するとき——AIはあらゆる場面でパートナーになり得ます。しかし「どう使うか」は、まだ個人の裁量に委ねられています。

ここに問題があります。AIへの文脈の与え方が、成果の質を決める。 しかし、その「文脈の与え方」が個人に属人化していると、組織として再現できません。有識者の知恵が移転されない。

これが、AI時代のゴールデンパスが必要な理由です。

ゴールデンパスの3つの構成要素

カンファレンスの議論と自分の実践から、AI時代のゴールデンパスは次の3要素で構成されると考えています。

1. インストラクション — AIの行動規範

CLAUDE.md.github/copilot-instructions.md.cursorrules——ツールによって名前は異なりますが、これらは「このプロジェクトでAIにどう振る舞ってほしいか」を記述したファイルです。

インストラクションがないと、AIは毎回ゼロから動き始めます。プロジェクトの文脈、コーディング規約、コンプライアンス上の制約——こうした情報を毎回プロンプトに書くのは非効率です。インストラクションに一度書いておけば、AIは常にその文脈の中で動きます。

重要なのは、インストラクションは組織の知恵の結晶だということです。「なぜこのルールがあるか」まで書かれたインストラクションは、新しいメンバーへのオンボーディング資料にもなります。

2. Skills — AIが実行できるタスクの定義

インストラクションが「何をしてはいけないか・どう振る舞うか」であるなら、Skillsは「何ができるか」です。

Claude Codeでは、/commit/review-prのようなSlashコマンドとして定義できます。繰り返し実行するタスク(コミット、レビュー、テスト実行など)をSkillsとして定義することで、チーム全員が同じ品質で同じ操作を実行できるようになります。

個人が作ったSkillを組織で共有することが、ゴールデンパスの拡張につながります。

3. ADR — 判断の「なぜ」を記録する

以前の記事でADR(Architecture Decision Records)を紹介しました。

techblog.ap-com.co.jp

ADRは設計判断の「なぜ」を記録し、Accepted / Superseded のステータスで「今有効な判断」と「過去の経緯」を分離します。

AI時代においてADRが特に重要なのは、AIが文脈なしに過去の判断を再現しようとするからです。インストラクションに「Aの方法でやる」とだけ書いてあっても、AIはなぜAなのかを理解しません。状況が変わってもAを踏襲し続けます。

「なぜ」があって初めて、AIは文脈を理解して適切に判断できます。

実践:このブログワークフローはゴールデンパスだった

振り返ると、自分が日々作り上げてきたブログ執筆ワークフローは、AI時代のゴールデンパスそのものでした。

CLAUDE.md(インストラクション)
  → ブログの書き方、文体、コンプライアンスをAIに伝える

lessons-learned.md(ADRの思想)
  → 過去の失敗と改善を記録。「なぜそのルールがあるか」が残っている

記事フォルダ / references.md(判断の記録)
  → 何を根拠に書いたか、どう検証したかが辿れる

この構成を見れば、誰でも「なぜこう書くのか」が分かります。「どうやるか」だけでなく「なぜそうするか」まで見えるので、真似するときに自分の状況に合わせて判断できます。

これが、ゴールデンパスの本質だと思います。強制ではなく、理由が見えるから自然と歩きたくなる道

組織への展開:スモールに真似できる形で

ゴールデンパスの価値は、共有されたときに最大化します。

1人が作ったCLAUDE.mdをチームで共有する。うまくいったSkillsを横展開する。ADRの書き方をテンプレート化してオンボーディング資料にする。

大事なのは「まず1人がやってみて、再現可能な形で公開する」ことです。完璧なゴールデンパスを最初から設計する必要はありません。1人の実践が、組織のゴールデンパスになっていきます。

「有識者の知恵をスモールに真似できる形で抽出する」 ——これがAI時代の組織的オンボーディングの姿ではないかと考えています。

まとめ

要素 役割 AIとの関係
インストラクション AIの行動規範 文脈を与え、毎回ゼロから始めさせない
Skills AIが実行できるタスクの定義 繰り返し作業を標準化し、品質を揃える
ADR 判断の「なぜ」の記録 過去の判断をAIが正しく解釈できるようにする

AI時代のゴールデンパスは、コードやパイプラインの標準化ではなく、コンテキストの標準化です。

インストラクション・Skills・ADRの三位一体が揃ったとき、初めてAIは組織の文脈の中で動けるようになります。そして、その文脈を共有することが、組織全体のAI活用の底上げにつながります。


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本記事の投稿者: 越川将人