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株式会社エーピーコミュニケーションズの技術ブログです。

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【Backstage】 Tech radarで技術選定の可視化とガバナンス

皆さんこんにちは。エーピーコミュニケーションズ ACS事業部の亀崎です。

皆さんの組織では、取り組む技術の選定やその評価をどのように行っていますか?どのように共有していますか? 組織のサイロ化を(適切に)解消していくと、効率的な技術選定を推進するためにそうした情報を組織的に共有していく必要が出てきます。 そこで登場するのが「Tech Radar」です。

エンタープライズ開発を加速させる「Tech Radar」の力:Backstageでの技術選定の可視化とガバナンス

現代のソフトウェア開発において、増え続ける技術スタックをどう管理し、組織全体で一貫性を保つかは極めて重要な戦略的課題です。この課題を解決するための強力なツールが、ThoughtWorks社によって提唱された「Tech Radar(テクノロジー・レーダー)」です。

本記事では、BackstageにおけるTech Radarプラグインの役割、その構造、そして組織にもたらす価値について詳しく解説します。

1. Tech Radarとは何か:技術の「羅針盤」

Tech Radarは、組織が採用、評価、あるいは放棄すべき技術スタックを視覚的にマッピングし、エンジニアリングチーム全体で共有するための知的フレームワークです。単なるツールのリストではなく、組織の技術的アイデンティティと戦略を体現する「単一の真実の源(Single Source of Truth)」として機能します。

レーダーを構成する2つの軸

Tech Radarは通常、以下の2つの要素で構成されます。

  • 四分円(Quadrants): 技術を「言語」「フレームワーク」「インフラ」「プロセス」などのカテゴリに分類します。これらは組織のニーズに合わせてカスタマイズ可能です。
  • リング(Rings): 技術の採用成熟度を同心円状に表現します。中心に近いほど組織として強く推奨される技術であることを示します。

実際のイメージは以下のようになります。

2. 推奨度を定義する「4つのリング」

Tech Radarの最も重要な要素は、各技術がどのリングに属しているかという点です。一般的に以下の4つの区分が使われます。

  1. Adopt(採用)/ Use (利用) : 成熟しており、本番環境での利用を強く推奨する技術です。
  2. Trial(試行): 特定のプロジェクトで検証が行われ、効果が確認された段階です。より広い検証を推奨します。
  3. Assess(評価): 導入の価値があるか調査・研究を行っている初期段階です。
  4. Hold(保留): 新規プロジェクトでの採用を控えるべき、あるいは非推奨とされる技術です。

また、各技術項目(エントリ)には「Moved(移動)」フィールドを設定でき、その技術が推奨に向かっているのか(勢いがある)、あるいは衰退しているのかという動的な文脈を視覚化できます。

3. Backstage Tech Radarがもたらす組織的価値

開発効率の向上と意思決定の迅速化

開発者が新しいプロジェクトを始める際、「どのツールを使うべきか」という調査に費やす時間を大幅に削減できます。承認済みの技術スタックが明確になることで、「技術的無秩序(Tech Entropy)」を抑制し、エンジニアはビジネスロジックの実装に集中できるようになります。

オンボーディングの加速

新しく加わったメンバーは、組織がどのような技術を推奨し、なぜそれを選んでいるのかをレーダーを通じて迅速に理解できます。DynatraceやLunarといった企業の事例では、Backstageの活用によりオンボーディング時間が短縮されたことが報告されています。

ガバナンスと「黄金の道(Golden Paths)」

Spotifyでは、Tech Radarで「Adopt」とされた推奨技術をソフトウェアテンプレート(Scaffolder)と同期させています。これにより、エンジニアは数クリックで「正しい選択」が組み込まれたプロジェクトを立ち上げることができ、ガバナンスと自由度の両立(Guardrails)を実現しています。

4. 技術的アーキテクチャと運用

Backstage Tech Radarプラグインは、主に以下の3つのパッケージで構成されるモジュール化された構造を持っています。

Radar-as-Code:データ管理の自動化

技術データはJSONやCSVファイルとして管理され、GitHubなどのリポジトリから動的に読み込まれます。これにより、ドキュメントの更新と同じ感覚で技術スタックの定義を更新でき、CI/CDパイプラインを通じた自動反映が可能です。

5. 導入にあたっての留意点

Tech Radarは強力ですが、運用には一定のコストがかかることも理解しておく必要があります。

  • 継続的なメンテナンス: 技術環境は常に変化するため、定期的にレーダーを更新し、組織内の合意形成を行うプロセスが必要です。
  • TCO(総保有コスト): 大規模な組織では、Backstage自体のアップグレードやプラグインのカスタマイズのために、専任に近いチームが必要になる場合があります。

まとめ:組織のレジリエンスを高めるために

Backstage Tech Radarは、単なる情報の可視化ツールではなく、エンジニアリング組織が自信を持って迅速に動き続けるための「コンパス」です。

技術選定の透明性を高め、ベストプラクティスを共有し、無秩序な技術拡散を抑えることで、組織全体の技術的レジリエンス(適応力)を確実に向上させることができます。これからプラットフォームエンジニアリングに注力する組織にとって、Tech Radarは欠かせない基盤となるでしょう。

最後に。
弊社では、Backstageのマネージドサービスである「PlaTT」 を提供しています。 開発者ポータルの前提となる Platform Engineeringの導入支援も行っております。 開発者体験を向上し、開発生産性を高めたいとご検討の皆様、ぜひ弊社までご相談ください。

www.ap-com.co.jp

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