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Databricks AI/BIダッシュボードはここまで来た!

※本記事は、Data + AI Summit のセッションを現地で視聴したエンジニアが、内容をできる限り客観的に共有することを目的に、生成AIを活用して作成したものです。 ― エーピーコミュニケーションズ Lakehouse部

エンタープライズ規模のレポーティングを実現する新機能まとめ

今年初夏に開催されたData + AI Summitでは、多くの発表がありましたが、特にエンタープライズの現場で働く人々にとって見逃せないセッションがありました。Deliver Data Where It’s Needed: Scale AI/BI Dashboards for Enterprise Reportingというセッションです。

本記事では、このセッションで発表されたDatabricks AI/BIダッシュボードの進化、特にエンタープライズ規模でのレポーティングを劇的に効率化する新機能について、テックブロガーの視点から客観的に解説します。日々のレポーティング業務に課題を感じている方、データ活用の幅を組織全体に広げたいと考えている方にとって、具体的なヒントが見つかるはずです。

エンタープライズレポーティングの課題とDatabricksの答え

多くの企業では、BIツールを導入しているものの、「データガバナンスの壁」「パフォーマンスの限界」「AI活用の難しさ」といった課題に直面しています。データがDatabricksレイクハウスにあるにもかかわらず、TableauやPower BIといった外部BIツールにデータを移動させると、権限管理が二重になったり、大規模データでのパフォーマンスが劣化したりするのはよくある話です。

セッションの冒頭では、DatabricksがBIソリューションに投資する理由として、この課題を解決できるユニークな立ち位置にいることが強調されました。具体的には、以下の3つの点で大きなメリットを提供できると述べられています。

  1. Unity Catalogによる統一ガバナンス
    データへのアクセス権限をUnity Catalogで一元管理。ダッシュボードもそのガバナンスを継承するため、セキュリティと管理の複雑さを大幅に軽減します。

  2. SQLエンジン直結のパフォーマンス
    外部ツールへのデータ転送が不要なため、Databricks SQLの性能を最大限に活かし、大規模データでも高速なインタラクションを実現します。

  3. AIとのシームレスな統合
    自然言語で対話的にインサイトを得られるAIアシスタント「Genie」など、レイクハウス上のデータを活用したAI機能をBIに直接組み込めます。

この思想のもと、Databricks AI/BIダッシュボードは単なる可視化ツールではなく、データプラットフォームに深く根差したレポーティング基盤として進化を続けています。

進化した「スケジュールレポート」で配信を自動化・個別最適化

ダッシュボードを作成しても、それが必要な人に適切なタイミングで届かなければ意味がありません。今回の発表で最も大きな進化を遂げたのが、この「届ける」部分を担うスケジュールレポート機能です。従来の単なる定時配信から、より動的でインテリジェントな機能へと生まれ変わりました。

講演で紹介された主要なアップデートは以下の3点です。

  • Databricks Workflowsとの連携によるイベントドリブンな配信
  • 受信者ごとに最適化されたビューを配信するフィルターカスタマイズ
  • Unity Catalogと連携した受信者権限ベースの実行

これらの機能によって、これまで手作業や複数のダッシュボードで対応していた複雑なレポーティング業務を、一つのダッシュボードで自動化できるようになります。

Databricks Workflowsとの連携

これまでのスケジュール機能は「毎週月曜の朝9時」といった時間ベースのトリガーが基本でした。しかし、新しい機能ではDatabricks Workflowsと統合され、データパイプラインの完了をトリガーにレポートを配信できるようになりました。

例えば、「ETL処理が正常に完了したら、最新のデータが反映された営業ダッシュボードを関係者にメールで送信する」といったワークフローを簡単に構築できます。これにより、ユーザーは常に最新のデータに基づいたレポートを受け取ることが保証されます。

フィルターのカスタマイズ

多くの組織で「同じダッシュボードだが、営業チームAにはAの製品フィルターを、チームBにはBの製品フィルターを適用したレポートを送りたい」というニーズがあります。今回のアップデートで、スケジュール設定時にフィルター値をカスタマイズできるようになりました。これにより、一つのマスターダッシュボードを維持しつつ、配信先に応じて「関東支社向け」「関西支社向け」といった形で、それぞれの受信者にとって意味のあるビューをPDFで送信できます。ダッシュボードの乱立を防ぎ、管理コストを大幅に削減できる非常に実用的な機能と言えるでしょう。

受信者権限ベースの実行

最も強力なアップデートが、受信者の権限に基づいてレポート内容を動的に生成する機能です。これはUnity Catalogで設定された行レベルセキュリティやカラムマスキングを、レポート配信時にも適用するものです。

デモでは、同じスケジュールレポートを購読しているにもかかわらず、受信者ごとに異なるデータが含まれるPDFが生成されていました。これにより、「営業担当者は自分の担当地域のデータしか見られない」といった厳密なデータガバナンスを、レポート配信のレイヤーでも完全に自動で適用できます。一つのダッシュボードと一つのスケジュール設定で、全社の役員から各担当者まで、それぞれの権限に応じたレポートを安全に配信できるようになったのです。

Embedding機能の拡張:社外パートナーにもインサイトを提供

ダッシュボードは、ユーザーが日常的に利用するアプリケーションに埋め込まれてこそ、その価値を最大限に発揮します。DatabricksはこれまでもConfluenceのような社内ツールへの埋め込みをサポートしてきましたが、今回新たに外部クライアントやパートナー向けのEmbedding機能が発表されました。

これは「App-Delegated Authentication」と呼ばれる仕組みで、現在プライベートプレビューとして提供されています。自社で開発したカスタムアプリケーション(例:顧客向けポータルサイト)にDatabricksのダッシュボードを埋め込み、アプリケーション側の認証情報を使ってダッシュボードの表示内容を制御できます。

デモでは、PythonのFlaskフレームワークで構築されたベンダーポータルが紹介されました。このポータルにログインしたベンダーのIDに応じて、表示されるダッシュボードのデータが動的に切り替わります。例えば、「Vendor A」としてログインすればA社の売上データが、「Vendor B」としてログインすればB社のデータが表示されるといった具合です。

この機能により、エンドユーザーはDatabricksのアカウントを持つ必要がなく、自社のサービスの一部として自然な形でデータインサイトを提供できます。これは、自社のデータを活用した新たな付加価値サービスを展開する上で非常に強力な武器となるでしょう。

共有機能とアクセス管理の改善でビジネスユーザーの利用を促進

ダッシュボードの利用者をエンジニアやアナリストだけでなく、全社のビジネスユーザーにまで広げるためには、アクセス管理の簡素化とセキュリティの担保が不可欠です。この点においても、重要な改善が発表されました。

  1. 自動ID管理 (Automatic Identity Management)

これまで、ダッシュボードを共有するには相手がDatabricksアカウントを持っている必要がありました。新しい機能では、Azure ADなどのIDプロバイダーと連携し、Databricksに未登録のユーザーやグループを直接検索して共有できるようになります。これにより、管理者が事前に全ユーザーをプロビジョニングする手間が省け、シームレスな共有体験が実現します。

  1. Consumer Entitlementロール
    「ビジネスユーザーにダッシュボードを共有したいが、ワークスペース内の他の機能にアクセスさせたくない」という声に応える新しいロールです。このロールを付与されたユーザーは、共有されたダッシュボードの閲覧と実行のみに権限が制限されます。これにより、ビジネスユーザーも安心してDatabricksワークスペースに招待できるようになります。

導入事例:White Chipping社は組織の75%が活用

これらの機能が組み合わさることで、企業全体でのデータ活用が加速します。セッションでは、White Chipping社が導入した結果、組織全体の75%が日常の意思決定にAI/BIダッシュボードを活用するに至ったという成功事例が紹介されました。

専門家だけでなく、あらゆる職種の従業員が、スケジュールレポートや埋め込みダッシュボード、あるいは直接アクセスを通じて、必要なデータに当たり前のように触れる文化が醸成されているのです。これは、Databricksが目指すデータ民主化の一つの到達点と言えるでしょう。

今後のロードマップ

セッションの最後には、今後のロードマップも紹介されました。レポーティング機能だけでも、以下のような魅力的な機能が予定されています。

  • アラート機能: 特定のKPIがしきい値を超えた際に、ダッシュボードのスナップショットを通知。
  • Slack/Teams通知: メールだけでなく、チャットツールへの通知に対応。
  • 大規模配信: 数千人規模の受信者リストをアップロードし、一括で個別最適化されたレポートを配信。
  • CSVエクスポート: レポートの元データをCSV形式でエクスポート。
  • カスタムレポート: タイトルページなど、よりフォーマルな書式設定が可能なレポート機能。

ダッシュボード本体の機能も、新しいビジュアライゼーションやドリルダウン機能など、継続的に強化されていくとのことです。

まとめと次のステップ

Data + AI Summitで発表されたDatabricks AI/BIダッシュボードの新機能は、単なる機能追加にとどまりません。それは、データプラットフォーム全体でガバナンスを効かせながら、組織の末端にまでインサイトを「届ける」ための仕組みが、エンタープライズレベルで成熟したことを示しています。

  • スケジュールレポートは、Workflows連携、フィルターカスタマイズ、受信者権限ベースの実行により、インテリジェントな配信基盤へと進化しました。
  • Embedding機能は、App-Delegated Authenticationによって、社外パートナーをも巻き込んだデータエコシステムの構築を可能にします。
  • 共有機能の改善は、ビジネスユーザーが安全かつ簡単にデータへアクセスするための最後のピースを埋めました。

これらの機能を組み合わせることで、これまで一部の専門家のものであったデータ分析の恩恵を、組織内の誰もが享受できる未来が現実のものとなりつつあります。もしあなたの組織がレポーティングの非効率性やデータガバナンスに課題を抱えているなら、進化したDatabricks AI/BIダッシュボードを試してみる価値は十分にあるでしょう。